第27話
翌日組の事務所を訪ねてみると、一室で賭博が行われていた。
部屋の中央にルーレットが置かれ、ゲームが行われている。
三人の組員とディーラー。
客はスーツ姿の中年男が三人と、化粧の濃い水商売風の女が一人だった。
その部屋を通り過ぎ、組長室の前に立った。
部屋の中から、ドア越しに朋二の切羽詰った声が聞こえる。
「組長、もうやめてください。先代がお亡くなりになってからの組長のやり方は、あんまり仁義に外れすぎておりやす!」
修兵はドアの前に佇み、じっとその声を聞いていた。
「おう、朋二。てめえ、この俺に意見しようってのか」
「とんでもねえ。ただ、極道は決して弱い者いじめをしちゃならねえと、そのことを申し上げているだけで。先代はおっしゃっておりやした。『なあ朋よ、世の中にゃどうしようもなく悪い奴がいるもんだ。わしらの仕事は、そんな連中からカタギの弱い人たちを守ってさしあげるこった』」
「うるせえっ!親父は親父、俺には俺のやり方があるんでえ。てめえ、いつからこの俺に説教たれるほど偉くなった!」
二人の会話を窓辺に立って聞いていた祐二が、嘲るように嗤った。
「組長……」
朋二の呟きには、もはや失望と諦めの響きしかなかった。
彼はうなだれ、二人に背を向けると、部屋から出ようとドアを開けた。
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