第23話

 賢秀は全身を怒りに震わせ、手にしていた新聞を机に叩きつけた。


 黒竜会の会長が刺され、犯人は逮捕されたという。


 落ち着きなく組長室を歩き回りながら、幾度となく毒づくのだった。


「あの、能無しがっ!」


 そこへ、ドヤドヤと足音が近づき、乱暴にドアが開くと、組員に取り囲まれたトレンチコートの男が、単身押し入ってきた。


 近隣の組織からも恐れられている警視庁の捜査官、宮城春義であった。


 賢秀は精一杯の作り笑いで迎え入れ、


「これはこれは、宮城さん。今日は何か?」


 宮城は足早に歩み寄り、机の上の新聞を取り上げた。


「とぼけるな。黒竜会の会長を修兵使って殺ろうとしたの、おまえだろ」


「さあ。私もその記事で初めて知ったんですよ。修兵の奴、勝手なことをしやがって。私も迷惑してるんです」


 宮城は胡散臭そうに睨みつけた。


「それとも何ですか。野郎が俺の命令だとでも言ったんですかい?」


 二人の視線がもつれ合い、しばし火花を散らしたが、やがて宮城は言った。


「まあいい。今日はこのまま引き上げてやろう。だが覚えとけよ、俺の生き甲斐はおまえらみたいな連中を根絶やしにすることなんだ。必ず尻尾をつかんでやる」


 言い捨て、彼は部屋を出て行った。


「組長!」


 ドアが閉まると、石橋と前田が駆け寄った。


「くそったれっ!」


 ヒステリックに喚いて、賢秀はまた机を殴りつけた。


 拳が色を失い、痙攣するかのように震えている。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 駐車場に停めたマスタングの運転席で、祐二はその記事を食い入るように貪り読んでいた。

 読み終えた新聞をナビシートへ放り出すと、しばらく放心したようにシートへ凭れかかっていたが、やがて、何か思いつめたような表情で車を発進させた。

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