第19話

 朋二と別れてマンションへ戻った修兵は、リビングを抜けてまっすぐキッチンへ向かった。


 冷蔵庫を開けて酔い覚ましのオレンジジュースを取り出し、グラスに注いで一気に飲み干した。


 ジュースを冷蔵庫へ戻すと同時に、リビングの電話が鳴った。


 空いたグラスを流しへ置き、電話の方へ歩いて行って受話器を取った。


「もしもし」


 わずかな沈黙があり、その後女の声がした。


 御園優希である。


「あの……私」


 修兵は壁の時計を見た。


 日付が変わろうとしている。


「どうした、こんな時間に」


「また会ってくれる?――会いたいの」


「よせよ、そりゃ女の言うことじゃない。会いたい時は俺から連絡する」


「どういう意味?女は男の電話を待ってろってこと?一日中携帯を握りしめてあなたのことを考えてろとでも言うの?」


 思わず苦笑がこぼれた。


「違うよ。おまえが俺に会いたい時は、俺もおまえに会いたいってことさ。明日、学校が終わる頃迎えに行く。でも、ここの番号がよくわかったな」


「院長先生に聞いたの」


「そうか。じゃあ、また明日な」


「おやすみなさい」


 受話器を置くと、修兵はリビングのソファに腰を下ろして煙草を吸った。


 煙を胸深く吸い込み、立ち上る紫煙をぼんやり眺めた。

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