第18話
夜になって、修兵と朋二は昔馴染みのバーで久し振りに呑んだ。
昔は二人でよくつるんで明け方まで飲み歩いたものだが、いまはもうそれぞれが若頭の役職づきで、差し向かいで呑む機会はめっきり減っていた。
こうして肩を並べてカウンターに座ったのは、何年ぶりだろうか。
二人は上機嫌でグラスを傾けていたが、ふと朋二の声が沈んだ。
「すまねえな、修兵。俺がつまらねえことを耳に入れたばっかりに」
「朋さんのせいじゃねえさ」
「組長は何て?」
「別に。何もねえよ」
「俺に隠し事はなしだぜ。組長の奴、おまえを怖がってる。黙って見逃すはずがねえ」
修兵は朋二をじっと見つめた。
思いつめた表情には、確かに隠しても無駄だと思わせる気迫がこもっていた。
修兵は溜息をつき、ロックのバーボンを一口舐めた。
「俺を立てる気があるなら、証拠を見せてもらおうか」
「……」
「黒竜会の伊吹会長を殺れ」
「修兵。まさか、そんな馬鹿な命令に従う気じゃあんめえな」
修兵は口をつぐんで答えないかった。
「無茶だ、死にに行くようなもんだぜ。第一、そんなことしたらでっけえ戦争になるに決まってる」
「しゃあんめえ。親の言うことだ」
「ならその役、俺に譲ってくれ。おまえは組のために絶対必要な人間だ。俺が伊吹を殺る」
「朋さん?」
「おまえは本物の極道だ。俺が憧れてた若い頃のあの先代と同じ匂いがする」
「朋さん、その気持ちだけありがたくもらっとくよ。こいつはやっぱり俺の仕事だ」
修兵は呟き、冷たく笑った。
「なあに、生きても死んでも、どうせ極道一匹よ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます