第17話
翌日、組の事務所へ入って行くと、廊下の向こうから朋二がやってきたので声をかけた。
「昨夜はすまなかったな。トラックの手配」
「なあに、礼はもらってるよ。それより、また組長のお呼びだぜ。昨日の件だ」
修兵の表情が険しくなった。
そのまま行き過ぎようとすると、朋二が呼び止めた。
「修兵、大丈夫か」
振り返って微笑むと、そのまま歩き出す。
修兵の背中を見送りながら、朋二の表情は暗かった。
組長室のへ入ってみると、賢秀は窓辺に立って煙草をふかしていた。
修兵に続き、巨大なジュラルミンケースを引きずるようにして、祐二も入ってきた。
二人がドアを閉めると、賢秀はゆっくり振り向いて、机の上の灰皿で煙草を捻り潰した。
「修兵、俺に話すことがあるんじゃねえか」
「はい。中路地の件」
「おめえ、あそこがウチのシマじゃねえことは知ってたはずだな」
修兵が黙っていると、賢秀はさらに苛ついた口調になって、
「シマってのはおよそきちんと決まってるもんだ。シマ荒らしは敵に戦争をおっぱじめる口実を与えるようなものなんだぞ。それを、俺の許しもねえで。おめえ、親父に目をかけられてるからって、ちっとばっかいい気になりすぎてんじゃねえか」
「そんなことは」
「だったら、ちゃんと筋を通さんかい、この野郎!」
賢秀が激昂して机を殴りつけると同時に、修兵は背後の祐二に指を鳴らして合図を送った。
興奮する賢秀の前に、修兵と祐二は重いジュラルミンケースを置き、開けて中身を見せた。
息を呑み、気勢をそがれた賢秀に修兵は言った。
「二億あります」
賢秀は呆気に取られ、言葉を失った。
修兵への怒りすら、一瞬とはいえ忘れてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます