第11話

 二人は歩道橋の上で欄干に寄りかかり、下の通りを往来する車の流れを見ていた。

 優希が修兵の穏やかな横顔を見つめて訊いた。


「自分のことは何も話さないのね?」


「……」


「私の学校のことばかり訊いて、少しはあなたのことを話してくれてもいいんじゃないの」


 修兵は欄干に肘をついたまま、相変わらず街の雑踏を眺めている。


 優希は苦笑した。


「まっいいか。とにかく、今日はごちそうさまでした」


 そう言って背を向けようとした彼女のほっそりした肩を、修兵はいきなりつかんで引き戻し、驚いて振りほどこうとするのを無視して強く抱きしめた。


 優希はその腕の中で喘ぐように、


「離して……」


 しかし、修兵は無言のまま両腕に力をこめ、彼女の頭を自分の胸に押し当てた。


 歩道橋を往来する人々が、時折チラチラと横目で視線を投げて行く。


「人が見てるわ……」


 優希の声が上ずったところへ、修兵は強引に唇を重ねた。


 突っ張っていた優希の腕から、ふんわりと力が抜けた。

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