第6話

 殺されそうな語気の荒さに、狂犬どもも恐れをなしたか渋々引き下がった。


 逃げるように車へ乗り込むと、窓から唾を吐き捨て、乱暴に走り去った。


 いきなり車を持って行かれてしまい、事態がのみこめない祐二は、泣きそうな顔で修兵を呼んだ。


「兄貴!」


 応えはない。


「兄貴ぃ」


 重ねて呼びかけると、修兵は億劫そうに背を向け、スラックスのポケットに両手を突っ込んで足早に歩き出した。


 祐二はしばし呆気にとられていたが、すぐ我に返り、慌てて後を追った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る