第3話

 夕暮れの涼しい風が吹きはじめると、修兵はアーチをくぐって表へ出、そこで送りに出てくれた愛にさよならを告げた。


「もう帰るの?優希ちゃんに会って行けばいいのに」


「でも、俺も仕事がありますから」


「タクシーは?」


「いえ、歩きます」


「でも……」


「そんな気分なんです。ここはいつ来てもいいところだ。心が休まります……先生、どんなことがあってもここをなくさないでください。困ったことがあったら、何でも言ってください」


「ありがとう、あなたもね。ここはあなたの故郷なんだから。何かあったら、いつでも戻ってきていいのよ」


「はい、ありがとうございます。では、今日はこれで」


 踵を返して歩き去る彼の背中を、愛は優しく見送っていた。


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