第20話 生徒会長との出会い

私はあの後彼女を部屋に残し、ある所へ向かっていた。どうやら昨日あの校長が生徒会長から呼び出すようお願いされたそうな。入学初日に先輩に呼び出されるとか怖すぎるでしょ。


『やりましたね、歴史を改変する能力を持つ彼女を仲間に引き入れられましたね!

彼女がさらに力を使いこなすようになれば自分の好きな未来に作り変えたりできるようになるかもしれませんね。』

(そうだね、このまま彼女が私の為に働いてくれるかと言ったら怪しい所だけどね。)

『いえ、彼女は決闘で貴方との契約を代償にしています。互いに命を賭ける決闘の誓約は絶対に破る事が出来ないんですよ。

こんな勝負を受けるなんて自分の実力によっぽどの自信があったんでしょうね。

まぁ自分の思い通りに全てを変えられる力の持ち主ですもんね、当たり前と言えば当たり前ですね。』

(ふーん、まぁ十中八九それについての話だろうし急いで向かわないと。

しかし彼女の姉が生徒会長だったとは…

ここで対応を間違えて怒らせたら学園での行動にも支障が出ちゃうから出来るだけ穏便に済ませたいな。)

『妹を配下にされた姉の気持ちを思うと可哀想ですね…』

(罪悪感を誘うような言葉を言わないでよ...)


とりあえず昔私の友達に頑張って作らせた思い出のある扉をノックして中に聞こえるように大きな声で挨拶する。


「高等部2年、レスタ・アリスシアです。」

「どうぞ。」


扉を開け中に入ると山積みの書類を机に乗せてずっと何かを書いている同い年ぐらいの女子がいた。こちらを見ると幼顔だが、結構ファンがつきそうなタイプの可愛さだ。


「学校長からお話があると伺ったのですがどのようなご用件でしょうか...?」

「貴方のハーリア・リアナとの決闘についてのお話です。」

「あー、妹さんの件ですか。まぁそれは諸々の諸事情がー」


彼女はこちらをギロリと睨むように見つめてくる。無駄に会話を引き伸ばしてあやふやにするのは止めろというのがヒシヒシと伝わってくる、


「実は私、剣神の一族の出身でして。

それで先程勇者の子孫である貴方の妹さんと校長の公認で決闘を致したんですよ。」

「…はぁ、貴方のいう剣神が三代英雄のヘルカ・ボレオスタなら彼は子を作らなかったはずでは?それに本当に妹と決闘をするとは…」

「…剣神には1人だけ子供がいたのですよ。

それに妹さんには私の仲間になってもらうと言う条件で戦って勝たせて貰いましたよ。」


その言葉を聞いたお姉さんは大層驚いた様子で椅子から立ち上がって目を開いてこちらを見てきた。

ま、今まで誰にも負けたことのない最強の妹が負けるとか思うわけないか。


「妹が、負けたのですか?いえ、そんな事ある訳…」

「本当よ、生徒会長。いや、姉さん。」


そう言ってちょうど良い時に彼女はやってきた。ちょっとでもカッコつけたいのか、ドアに寄りかかってちょっとバランスを崩しかけたせいでちょっと残念女子って感じだと思ったが気のせいのようだ。

なんだ?この違和感は。そうか、これが彼女の歴史を改変する能力か...強い精神攻撃を受けた感覚に似ている。


「でも、あの力を持っている貴方が負けるわけが…」

「ふ、私だって全部の選択肢を試して全部無理だった時までは負けるなんてあり得ないと思ってたわよ。ただの鍛錬用の剣で山を切った時は絶望よ、絶望。ま、そんな大事件も篭りっぱなしの貴方は知らないでしょうけど。」


この人は妹の能力を知ってたのか。

確かに自分の好きな未来に変えられる人間が負けるなんてあり得ないと思うのが普通か。


「山を、切った?貴方いったい…」

「…ただの剣神の血筋の人間だよ。」

「…嘘は良く無いですよ。ただの剣神の血筋なら何故貴方の名前のところに先程名乗った

レスタ・アリスシアではなく、”剣神ボレオスタの転生体”と書いてるんです?」


そうはっきりと断言した彼女の目は青白く怪しげに光り輝いていた。

これはまさか鑑定眼か?前世を含めても噂程度にしか聞いた事が無かったから考慮していなかったが前世の情報まで読み取る事が出来るとは...

まさか姉妹揃って魔眼持ちって普通は思わないでしょ...でも散々能力を隠してた彼女の能力を知ってるのはこの眼で見られたからか。


「…はぁ、私は確かに剣神ボレオスタの生まれ変わりよ。他言しないでね。」

「それが本当なら聞きたいんだけど。勇者、と言うか私のご先祖さまってぶっちゃけどんな人なの?」

「まぁそうだね。マイペースでいっつもヘラヘラ笑ってふざけてて、あの頃は遊び人の勇者とかアホ勇者とか言われてたけど結局は人一倍優しいその力を皆を守る為に使って世界を救ったカッコいい自慢の弟弟子だ。」


私は魔王城にあった雷鳴を背中の袋から取り出した。


「これはかつて勇者が魔王を殺す時に使った聖剣だ。君達がいるって聞いてたしこれは君たち子孫が持つべきものだから渡すよ。家とかで飾ってそのまま封印でもしといてよ。これをもう使わない事があいつの望む事だろうし。」


その剣を渡すと、彼女は恐る恐るその剣を引き抜く。

その神の魔力の宿った魔石で作られたこの剣はまさしく聖剣だった。


「ありがとうございます。後、妹の件は放課後校舎裏で2人でじっくりと話し合いましょう」

「…えーと、では私はこのくらいでー」


そろりと逃げ出そうとするが彼女に首根っこを掴まれる。あれ!?あの女先に逃げやがった!

するとちょうどチャイムがなった。全ての授業が終わったのだ。


「じゃあ行きましょうか!」

「いーやぁ!」


その後どうなったかは自分の口からは言えない。

まぁ、今保健室にいると言ったら分かってくれるといいなって思う。

やっぱ女って怖い。あ、今は私も女だった。




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