第14話模擬戦 校長視点

 私は彼には勝てない。そんな事はとっくのとうに分かっているのだ。

彼の様な青い星の世界から来た人間たちは本来魔力を持たない世界で生まれた代わりにこの世界に来ると自身の才能が異常なまでに開花する。

剣神、それは現神が認めた相手にのみ与えられる世界で最も強い剣士に与えられる称号。その全盛と戦って勝てるわけがない。


だからこそ私は使えるものは全て使うのだ。

これは本来切り札として使うはずの物だが出し惜しみして負けては意味がない。

そう考えた私は異空間からある剣を取り出した。その剣を見た彼に明らかな動揺が走る。


「お前、その剣を何処で手に入れたっ、」

「ふ、戦っている相手にそんな事を言っても意味はないでしょう。」


 その剣の名前は雷鳴 ハーリアス。

 3000年前、空から雷鳴と共にこの世に出現し、勇者の名を冠するこの剣は勇者が魔王を殺した伝説の剣。

 禁足地になっている魔王城から発見され、この100年私が管理してきた物だった。

もちろんこれはレプリカだ。しかし魔力を測定できない彼がこれを偽物と断定する事はできない。


「それは、魔族に対する人類の誇りと名誉そのものなのだ。勇者でもないお前が軽々しく触って良い物では無い。」

「ほぅ?製作者の私が触ってはいけないとは中々面白い事を言われますな?」

「何を言っている?これはかつて神が作られた伝説の」

「だから、私がその神だと言っているのです。正確に言うと元、ですがね。」


 彼は怒っていた。当たり前と言えば当たり前だ。自分の弟弟子のが命をかけて守った平和の象徴を軽々しく触っていたのだから。


 そして彼は困惑もしていた。

私が神と言った意味を理解出来ていないようだった。しかしこれは本当に私が作った最高傑作の一振りだった。レプリカだが。

しかし神の職は大変暇なのだ。その為、現在の神に全てを託し、それよりは世界を直に見て回る方が良いと普通の人間になり、世界を回る旅を始めたのだ。


「さぁ、私も秘密を言いましたししっかりとやり合いましょうか。」


 彼は私を全力を出させるに値する人間だったのだ。それには敬意を払わねばならない。


 私は自分の出せる最高スピードで彼へ斬りかかるが間一髪で止められてしまった。だが今の精神が少し揺らいでいるこの瞬間なら行ける。


 そして、私は彼にある魔術をかけた。

これを解かれてしまったら私にはもう勝ち目はない。彼は膝から崩れ落ち白目を剥いて倒れ込んだ。身体はピクリとも動かず、倒れ込んだままだ。

 

 それは成功を意味していた。だが、何故か身体を動かす事が出来なかった。そのまま数分間体を動かさず、彼から出る覇気のような威圧感に身体が押し潰されるようだった。

すると、指先がピクリと動いているのが見えた。このままではだめだ。

必死に動こうとするが、身体が動く事を拒絶していた。


「…酷い人ですね。」


 彼はそう言って起き上がった。流石にこれは負けたと諦めて首をすくめると首を直ぐに切り落とされたのだった。


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