第12話久々の再会

 私達はとりあえず奴隷の彼女を連れて学校へと向かって行った。


「なかなかボロボロになってるな。キープの魔術をかけたはずなんだけど。」

「この300年間でここを中心に3回も戦争が起きていますしね。まぁしょうがない事だとは思いますけどね。」


 昔は漆喰が塗られ綺麗な洋風の白の様な見た目だったのに、今はボロボロになっていてヒビもかなり目立っている。

 すると正門から入ろうとすると正兵が2人門の前に立ち塞がった。


「申し訳ない!許可書が無ければここを通す事が出来ない!」

「えっと、これで良いですか?」


 実は先程のフードに一緒に合鍵ですと言うメモと共に入っていた鍵の形をした純金の首飾りを兵に見せると急いで門を開けてくれた。


「ではこちらをお通り下さい。その鍵は特別来客の方のみ案内する校長室へと直通している魔法陣がある部屋の鍵でして。」


 その鍵を使って奥の扉を開けるとあった魔法陣に乗る。するとそれは紫色に光始め思わず目を閉じ、次目を開けた時は懐かしい部屋だった。


「ようやく来られましたか。5日ぶりでしたでしょうか?」

「いえいえ、300年ぶりです。体感は5年ぶりですが、その節はありがとうございました。」


 そこにいたのは師匠に見せてもらって本の著者でもあり、異世界に転移してきて最初に色々教えてくれた図書館の館長さんがいた。

というかこの人なんでエルフじゃないのにこんな長生きなんだろう。


「ふふ、お互いあの時の様に普通にはお話しできる立場では無くなってしまいましたね。ささ、お座りください、ボレオスタ様。」

「いえいえ、貴方がいたからこそこの世界で上手くやることが出来たんです。それに、貴方はなかなか興味深い話を沢山知られてますし、それについても色々お聞きしたいなと。」

「それは良かった、それも今度お話ししましょう。今日は貴方に見せたい物がありましてな。」


 私達は向かい合う様に大きなソファーに座る。お、こっちのソファーも結構質が良くなってるから座りごこちがいいな。

そんな事を思っていると彼は魔法で虚空からある剣を取り出した。


「なんで...この剣は、私の墓に墓標として建ててもらったはずだったのに...」

「いえ、この剣は貴方か使っていた無銘ではありません。これは本来無銘の対となる様に作られた剣です。貴方の使われていた方のものは私が過去に彼女へ私がプレゼントしたものです。」


なんだって?師匠まさかのプレゼント流用してたのか。悪い女だぜ…

しかし懐かしいな、あの剣は殆ど飾りが付いているわけでも無く、凄い能力があるわけでもない。ただ切れ味と硬さが普通の剣の何倍にもなっていると言う点だけ。無銘なら鉄の塊だって簡単に切れてしまうだろう。


「貴方はこんなものを私に見せて何をしたいんです?」


 彼は悪そうにニヤッと笑った、悪戯が成功した悪ガキの様なそんな顔だ。


「私と模擬戦をしてもらえませんか?今の技術であれば貴方の全盛期の状態や姿で戦うことができますから。この世界で剣術で貴方に敵う人間は人類史の中で誰一人としていませんから。あ、もちろん怪我をしてもそこでは一切痛みも無いですし、死にもしません。」

「え、えぇ?それより私は学園についてお話ししにきたんですが...」


 しかし彼は完全に忘れていたようにハッとした表情を浮かべていた。戦いたすぎて他のことそっちのけやったんかい。しっかりしてそうだったけど実はポンコツか?


「えっとですね。一応学園では剣術、勉学、魔法の3種類があるんですがその中から習いたい所だけを習うようにきているんです。まぁ剣術に関しては逆に教えて欲しいぐらいなんですけどね。」

『これでもし学校でボッチになっても大丈夫ですね!』

(だまらっしゃい!友達できるか気にしてんだぞ!)


 本当にいらん所に口を挟んでくる堕天使様だな。ほんっとに!しょーもないところで口挟んで来ますね!


『天使に堕天使って言うなんて!良くないですヨォ!』

(言い方をどうにかしろ、言い方を)

「後はそこで聞いていただければ、さぁ早く戦いましょう!」


 彼はもう戦いたい様子でうずうずしていた。なんかダンディなお爺さんがくねくねしてるのはちょっと…


『うわっ、ちょっとキモいですね。』

(しっ、ダメよ!そう言う事は言わずに無視するのが一番よ!)

「そうですね。じゃあそこまで案内をお願いできますか?」


 するとその瞬間、転移魔法がかけられ気がつくと床に大きな魔法陣が描かれたガラス張りのドームの中にいた。この人?はやっぱり魔法に関しては凄いな。


「おぉ、まさか老体の姿が全盛期だとは。その極められた技が楽しみですね。」


 すごい。本当に元の85歳の姿になっている。しかし息切れも動悸もしない!最高ダァ!…やべ、堕天使の語尾がうつるとこだったぜ。

だが無銘に似たこの剣。軽く振ってみると確かに使い続けた愛刀ではないのがはっきりと分かる。…また行った時には使ってやろう。


「では、始めましょうか。」


 彼はタキシードを脱ぎ捨てて、シャツ一枚で剣を構える。身体が潰されるような溢れんばかりの魔力とその構えには一切の隙はなく、模擬戦ではなくかつての命を賭けた戦いを思い出させられる。


「手加減はしませんよ、殺すつもりで行きますので。」

「では、」


 世界の頂点、その戦いが今始まった。









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