第11話奴隷の少女

 ガラガラと石畳で舗装された道を進んでいく。外には露店が所狭しと並んでいてまるでお祭りの様な雰囲気だ。


「昔は何も無かったが今ではこんなに賑わいが出ているのは嬉しいな。」

「…いえ、今日は本当に奴隷市ですので貴族の方も来られるのでその方達へのみやげ物を売る為の露店ですよ。まさしく祭りですね。」


 確かに奥の路地には暗くてよく見えないが鉄格子がいくつか並んでいるのが見える。


「チッ、胸糞悪い。同じ人間をこんな風に扱うなんて。」

「全くです。ですが今日の大目玉は中々に珍しい。精霊エルフ族の生き残りですね。」

「え、数が少ないのは神聖エルフ族じゃあ」

「100年前ぐらいにエルフ同士の戦争が起きて精霊エルフ族の方がほぼ絶滅状態なのですよ。」


 そこには質素なボロボロの服を着た16〜17くらいの少女が首輪を付けられてステージに立たされていた。


「あの、奴隷を買ってから自由の身にすることって可能ですか?」

「ええ、でもそんな事しても利がないですからそんなことする人は…あの子を買うつもりですか?」

「うん、あの子を買えるぐらいはお金はありますよね。」


 俺は急いで馬車から降り、オークション中の彼女の所へ走った…


「金貨120枚!金貨120枚が出ました!これ以上のお方は居られるでしょうか!」


 私はリア。まだ17歳でエルフにしてはとても若い年齢。だからこそあの神聖エルフ族は両親を殺し私を貴族が集まるこの奴隷市に売り飛ばしたのだ。私を性道具としか見ていない様な太った貴族達の目は血走っている様にも見える。

 あぁ、なんて不運な人生なんだろう。私達家族はただ森でのんびりと暮らしていたかっただけなのに。


 今の価格は金貨120枚。あの太って脂汗をテカテカさせている貴族だ。私あんな貴族に売られちゃうのか…助けて…お父さん、お母さんっ


「300枚!金貨300枚だ!」


大家族でさえ出し渋るような大金の出現により場はどよめき始め、その声の主に視線が集まった。

 その人は黒いフードを纏っていて顔は見えないがその声は若い女性の声だった。

 そんな大金をポンと出すなんて王族なのだろうか。

 私を手に入れたと思っていた貴族は予算が足りないのか明らかに不機嫌だ。


「どうだ?これで?」

「え、ええ。300枚!金貨300枚が出ました!これ以上ある方はお手をおあげ下さい!」


 しかし誰も手を上げる事は無くそこには静寂が広がった。


「では落札!金貨300枚で落札です!」


 カンカンカンとコングが鳴り響く。私は顔も分からない見知らぬ女性に買い取られることになった…



 ふぅ、なんとか間に合って良かった。

120枚出してた貴族はめっちゃこっちの事睨んできたなー

明らかにこいつには渡しちゃダメって感じの奴だったから急いで買い取ったのだが、とりあえず学園の寮で着替えさせてある程度お金を持たせてあげてから元の家に返してあげるか。


「いやー凄いですね。はい、確かに金貨300枚頂きました。あっ、これがこの娘の情報ですのでお受け取り下さい。」


 男に彼女についてのプロフィールの様なものを受け取ると私は彼女をとりあえず馬車に連れて行った。


「あ、あの」

「ん?どうしたの?」

「奴隷の私がこんな良いところに座っては...」

「あ、別に私は奴隷が欲しいから買ったんじゃ無くてただあいつらに買われるのは可哀想だなって思っただけですぐに自分の家に帰れるよ。」

「…私の家族はみんな殺されました。家も全部燃やされてこの身一つであそこへ売り飛ばされてしまったので。」


 重たいよ…もう帰る場所とかないのに買っちゃったとかどうしよう。


『じゃあ自分の専属メイドにでもなってもらったらどうです?』

(…確かに、また他の奴らに捕まったら元も子もないしな。それだったら目の届く範囲に入れるし、それが良いかもな。)


 エルフはみんなプライド高いけどその分頭が良いし、教えれば全て吸収してくれる。そう言う面でも良いかもしれないな。


「ねぇ、君。私の専属メイドにでもならないか?」

「…え、あ、ももちろんですが、男性の方をメイドにはしないんですか?」

「そうですよ!別に貴方の所で働かせる必要はなくないですか!?」


 確かに貴族とかがメイドにそう言う性的奉仕をさせることがあるって聞くけどな。

 あとメイドさんどうしたの。急にテンパりだしたけど。


「あ、私身体は女だけど中身は男だから。」

「それも初代教皇様の生まれ変わりですもんね。私の大切なご主人様ですから。」

「貴方とは会ったばかりですけどね。」

「え、え?ええぇええ!!?」


彼女の素っ頓狂な声に私は少し笑ってしまった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る