第9話別れと出会い

 サンドイッチを食べた私達はそのあと馬車を待たせては悪いと急いで家へと戻っていた。


「師匠はこれから何処へ行くんですか?」

「とりあえず故郷で両親に会うつもりです。こちらに来てからは遠いのでなかなか会える機会が無かったので。」

「へぇ、今度師匠のご両親にもお会いしたいですね。」

「貴方の事は手紙で伝えているのできっと喜んでくれますよ。」

「そうだと良いんですけどね。」


 落ちない様にしっかりと師匠にしがみついていると師匠の心臓の音が聞こえて少し安心というか、温もりを感じる。

昔の私の両親にはこんな事一切された事が無かったし、私自身も親孝行なんて一切したことも無い。

あの頃は実際親の事なんてどうでも良かったし、それよりしょうもないゲームのことばっか考えていた。でも、会えない今だからこそ両親という存在に感謝する大切さを学べた。


「師匠。」

「なんです?」

「またきっと、会えますよね?もう二度と会えなかったら、悲しいですし。」

「大丈夫です、きっと神様は私達が離れた後もまた巡り合わせて下さいますよ。」


 …行って欲しくないなぁ。

辛いなぁ。ずっと今まで成長を共にして、辛い事も、楽しい事も一緒に居てくれた人と別れるのは。死とはまた別物の別れだが会えないというのはやはり寂しいものだ。


…あぁ、もう家に着いてしまった。

もう彼女とも終わり、私は馬を降りて師匠と手を繋ぎながら歩いていく。

玄関先で母さんと父さんが待っていてくれた。少し寂しそうな顔が私の心に突き刺さる。


「父さん、母さん。」

「分かってるわ、貴方がその道を選ぶのなら私達は止めはしないわ。」


 違うよ、今私が欲しいのはその言葉じゃないの。そんな励ましの言葉が欲しかったんじゃない。もうちょっと一緒に居たいだけ。

2人はは優しく私の事を抱きしめた。


「この先、色んな事があるだろうし辛い事もあると思う。でも、一人で抱えたらだめ。

 辛いんだったら僕らを頼って良いんだよ。レスタは、僕達の大切な娘なんだから。」


 その父の言葉に僕は涙が止まらなかった。

2人はまがい物の私を、家族として迎えてくれて頼って良いんだよと、そう言ってくれた。

今後悔したって遅いけど、無性にかつての家族と話をしたくなった。


「ありがとう、父さん、母さん私頑張ってくる。」

「あぁ、行っておいで。」

「貴方がどんな人生を歩んだとしても私達だけは絶対に貴方を愛しているわ。」


 母さんは最後におでこにキスをしてくれた。

 私は馬車に乗りみんなに手を振る。


 父と母は寄り添いあって微笑みながらこちらに手を振っている。

 師匠も、さようならーと手を大きく振って言っている。

 最後に私は窓から身体を乗り出して手を振る。


「みんなー!」

「なーにー?」

「また一緒にご飯食べよーね!」

「分かったわー!」


 だんだん馬車のスピードは上がり、みんなの姿はどんどん小さくなっていく。

そして見えなくなった頃、私は魔法で空に大きな花火を打ち上げる。まだ夜じゃないし、大きさも小さいから見えているかどうかは分からない。それでもこれがみんなに見えていると私は信じている。


「ありがとう」

 そう小さく呟くと私はぎゅっと貰った杖を抱きしめ、ガタガタと揺れる馬車に揺られながら深い眠りについた…






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