第5話人として生きる者


「…分かりました。ですが、蓄魔病の進行が始まっていると言うのはお分かりですよね?」

(あぁ、師匠だってこれで死んだんだからな。)


 蓄魔病、正式名称は蓄積性魔力結晶病。身体に宿る魔力が徐々に魔石化していく病だ。

だが普通に魔力を消費すれば大丈夫なのだが、問題は子供が死なない程度に魔力を発散できる魔法を使えなくてそのまま死んでしまう事だ。これにより最大で最も人を殺した病となり

推定8億人以上の命が奪われた。進行するとやがて心臓に届き、患者の命を奪ってしまう。

だがある時その欠点を補う画期的な治療方法が開発された。それは仲介の人間を挟んで魔力を発散する方法だ。


「とりあえず、魔術で十分に使える様になるまでは仲介の魔女を置いておきますのでその者に魔力を渡し、発散してもらってください。きっと気に入りますよ。入りなさい!」


僕は入ってきた人物を見て驚愕した。


(何故貴方が…)


 それは、師匠だった。昔の様な服装では無いが、かつて死んだはずの師匠の見た目をしていた。


(死者蘇生の術を使ったのか!?地下のノートは燃やせと言ったはず!)

「いえ、彼女は教皇様の師に似ているだけの別人です。喜んでもらえると思いまして、魔力をご覧いただいたら分かると思います。」

「は、はひぃ。ど、どうでしょうか、」

『うーん、貴方の記憶にある師匠は水と火ですが確かにこの子は光と闇ですね。人が一生のうちに魔術属性が変わる事はないので間違いなく別人ですね。』


別人と分かっても見れば見るほどそっくりだ。本当にドッペルゲンガーか、もしかしたら転生した師匠が宿られているのかもな。私を助けてくれたあの人のお墓には大きくなったらまた行こう。あいつらにも会いたいしな。


「では、私は仕事が残っておりますのでまた帝都に戻ります。彼女はここに置いておきますので気になられる事がありましたらこの者にお聞きください。

いずれお迎えにあがります。」

(コールドスリープの件については許す。

だかノートの他の物はだめだ。あれは人間が手を出すには早すぎるものだからな。まぁ、また会えて嬉しかったよ。)


 彼女は笑って出て行った。そして残されたのは呆然とした両親、僕、名前も知らないまま金貨をパンパンに詰められた袋を重そうに持っている師匠似の女の子1人だ。


「とりあえず、お名前教えて下さいませんか?あ、立ち話もなんですし椅子でも座って。」


 父は勇気を出して話しかける。昔のコミュ障インキャの僕が見たらすげ〜って感動するかもな。


「ええっと、マリア・グランデと言いまふ!」


 …あのやろ、しょうもないことしやがって


「マリアちゃん!いい名前ね。後で諸々の事情は聞かせてもらうけどとりあえず一緒に生活することになったみたいだし、とりあえず宜しくね?」

「はひ!皆様のご迷惑にならないように精一杯がんばりまふ!」


あの鈍臭い師匠でもここまで噛んだりはしなかったなぁ。ずっこけまくってたけど。


「…それよりレスタ、チャペラ様のお話が聞こえていたけれど貴方は教皇様なのですか?」


首を横に振った。元なので別に嘘はついてない。

「私達は貴方の教えに従い生きてきたんです。

貴方は初代教皇様ですか?」


うーん、これはどう答えるべきなのだろう。

まだギリギリ天才的な赤子と出来るかもしれない。勇者とかもそうだったらしいし。

無理だな…観念するしかないか。


私は諦めて彼女の問いに頷いた。


「ふふ、まさかうちに賢い教皇様の生まれ変わりが生まれてくださるなんて光栄ね!」

「あぁ、まさか創始者の貴方が僕の娘だとは感慨深い!」


 え…もしかして

 そう思って部屋の壁をよく見る。生まれたばかりのときは視力が悪いので全然見えていなかったので気づかなかったがそこに神代教のタペストリーがあることに気がついた。

2人とも私の宗教の信徒だったのか。


「ほら!早く私のを飲んで下さい!教皇様!」

『ほらほら、早く飲んで下さい。飲まないと栄養失調で死んでしまいますよー?』


 母は恥ずかしげもなくアレを飲ませようとしてきた。後お前は私の味方じゃ無いのか!おい!やめろ、やめてくれぇ!


あの疫病神め!今度あったらただじゃおかねえからなぁ!






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