第2話3度目の人生は赤子からって当たり前だけど大変だよね


目を開けると、何十年も昔に神に出会った場所にいた。


この人生で後悔している事もまだあるし、良かったと思う事もある。だが、自分なりにがむしゃらに生きた。さまざまな人に出会え、それの経験を分かち合う大切さを教えてもらえたのだから。もう満足だ。


「お久しぶりです。この人生、楽しませて頂きました。」

「…まさか私の事をあれだけ恨んでいた貴方が私を使って宗教を興すとは。想像だにもしませんでしたよ。」

「…かつての私が貴方に失礼な事をしたのですから贖罪として偉大な貴方の存在を民に気づかせただけです。」


道を歩けば野盗に襲われ、検問を通ろうとすると魔族と間違えられて殺されかける、挙句

勝手に赤の他人に罪を被せられ逮捕されかける事もありました。

いそれでも死ななかったのはなんだかんだで見守ってくださった貴方が居たからだと今はわかります。


「それに関しては申し訳ないです。あの頃の私はどうかしていました。あそこまでしなくても良かったな。と後悔していました...」

「もう大丈夫です。それより私が気になるのは二度死んだ身の私はどうなってしまうのでしょうか。消えてなくなるのか、また別の世界へ?」

「申し訳ないのですが、貴方にはもう一度あの世界で頑張ってもらいたいのです。」


死後についてはあらゆる可能性を考えてきましたけれどやはりあの世界の化学技術の進歩を促すためですかね。

十万年前から農耕が始まっていたのに中世レベルまでしか文明が発展していない事を知ったときはびっくりしましたね。

科学分野を魔術が邪魔をしている感じですし。

産業革命が世界を変えたことを身に染みて感じた気がしますね。


「まさにその通りです。貴方にはまた地球の科学技術を広めてもらいます。そうしてもらえるとこちらとしても助かるので。」

「それなら一つお願いなのですが次の身体は前とは違う若い身体にしてくださいませんか?流石に教皇の遺骸でもゾンビの言うことは聞いてくれないでしょうし。」

「ええ、分かりましたよ。貴方には私の加護を付いています。…次も頼みますよ。」

「その御言葉を賜るために今まで生きてきたのです。お任せください。」


その言葉にぺこっと頭を下げ、私は空から落下していった。


「因果は巡る、かぁ。」

「そうだな、私もそろそろ向かうとするよ。」


____________________________________


この世界に再転生して10日ぐらい経った。

どうやらあの世界での体感は10分程度だったが地上では300年経っていたようだ。浦島太郎もびっくりの時間の差だ。

若くしてとは言ったが胎児からとは思わなかった。


「ーーーエー」


うーん、中々思うように声が出せない。

やっぱり身体も声帯もまだ未成熟だし徐々に慣れて行くしかないか。

でも声を出せないのがこんなに不便だったなんて...

しかしいい事もあった、この世界で生まれた身体だと魔法が使えるようになったのだ。まだ指先に光を生み出すだけしか出来ないが、いずれは師匠のような大魔術を使えるかもしれない。


異世界なのに魔力なし、基礎体力はニート生活でかつての筋肉は脂肪に変わり、一文なしの地獄スタートのあれと比べれば全然マシだ。


「レスタちゃーん!ミルクの時間ですよー」


…しかしこれはキツイ。

これがキツいのだ。恥ずかしいし、昔の様な考えは捨ててしまっているので精神は大人の男にこれしてると思うと彼女が可哀想だ。

心が若くなって恥ずかしいというのもある、だがさしてこれは問題じゃない...


「こんな可愛い女の子が産まれてくれるなんてあぁ本当に幸せだわ!本当に、世界一可愛いわぁ!貴方!」

「あぁ、そうだなヘラ。こんなに可愛い子が僕達2人の血を引いてると思うと感慨深いものがあるなぁ。」


女はいかんでしょ。ねぇ?男性諸君。

男が男の象徴を失ったらそれはもう終わりじゃねえか!?


アレを噛み切らないように優しく吸う。

別にナニとは言ってないからセーフだ。

…こんなんを昔みんなしてたと思うとなんか嫌になってくるなぁ。

暇だし空いてる手で魔術の練習でもするかぁ。


前世では魔法を教えて下さいって言われた時にライトのイメージで指先に魔力を込めると比較的上手く行った。魔術はイメージって言うけど使えて初めて実感するな...


ライトのイメージをしながら指先に魔力をためていくと、昼なので分かりづらいがピカッと微かに光った。本当にビミョーに。

だけど僕の母親はその光を見逃さなかったんだ。


「ねぇ!貴方今この子光魔法使ったわよ!」

「なんだと!基礎魔術とはいえ子供が魔術が使えるようになるのには3年はかかるぞ。」

「でも!今やったよね?ねえねえ、もう一回やって!」


どんな目したらこんな光見えるんや、この親

動体視力バケモンかよ。

そ、れ、に、赤ちゃんにそんな大きい声で叫んだらダメでしょ。

まぁ、別にこれで将来有望とかで王都に戻れれば師匠のようにゆっくりと研究者として生きていけるかな?


また指先に魔力を込めていくが、むむ、もう一回やろうとするとなかなか難しいな。

なんだっけ、血液と同じように身体に魔力が流れてるイメージ?も結構大事なんだっけか。


ピカッ、ジジジ。そんな音とともに指先から光が照らされた。うっ、目がぁー目がぁー

このネタをこっちの世界でやった時に場が凍ったのを僕は未だに忘れられない黒歴史だ。


「ほら!貴方やっぱり!」

「嘘だろ!?産まれてこんなすぐに魔法が使えるなんて!チャペラ様に報告だ!」


チャペラ、ふーむ…あれ?それって僕が昔作ったチャペル部隊の子の名前だけど...まぁ300年経ってるのに生きてるわけないしな!

あれ?…昔コールドスリープについての資料残したような…まぁ流石に言いつけ通り燃やしてる...よな?ま、地球でも再現できてなかったし、人違い人違い!


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