其の弐 天使の少年
荒れ果てた荒野の真ん中で、少年は蹲っていた。少年の服はボロボロで、何か強大な敵と戦ったあとのようだ。
少年の背中には一対の羽が生えている。黒と白の混じった羽は、美しくもあるが、おぞましくもある。
周りは死屍累々としている。少年と同じように羽の生えた人。そして、羽の生えていない人の二種類に分けられる。少年が最後の生き残りのようだ。
よく見ると、少年はラッパを抱きしめている。強く、強く。誰かを想うかのように強く抱きしめている。
「う、うぅぅ……」
身体を震わせ、目から大量の涙がこぼれ落ちる。涙は頬を伝って顎に集まり、落ちていく。それは少年が抱きしめているラッパを濡らしていく。
「なんで、どうして……」
うわ言のように何度も呟く。涙でろくに見えない目は、一人の少女に向けられていた。少女には少年のような羽は無い。そして、とうにその命も尽きている。少女の手には、新品と見間違う程に綺麗な剣が握られている。
何故こうなってしまったのか、何か手は無かったのか。考え続け、その結末がこれなのだ。もう、少年に生きる気力は無い。
「ああああああああぁぁぁ!!!」
少年の命は、慟哭となって世界に響いた。
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