第8話

「あれ、今回のクエストのメンバーかな?」


「そうかもしれないわね」


「じゃあ、終わるまでじっとしててね、動いてるのバレると困るから」


「え、ずっと!?討伐終わるまでかなり時間かかるじゃん!肩の上で静止とかハードル高いんだけど!」


「だったらマントの下に隠すとか、首飾りとかにして動いても大丈夫なようにしてよ!」


この後のことを想像してうさぎは文句を言う

確かに動かないで不安定な方の上にずっといるのはきついでしょうけど、

他の場所にいられてはまずい理由があるのです。


「仕方ないでしょ?魔法使いで登録しちゃったんだから、

魔法を使う時、周りから見て違和感ないようにしないといけないのよ」


「しんどいー!後で、ちゃんとご褒美ちょうだいよ!」


「わかったわかった」


あまりにごねるので、クエスト終わったら街でなんかかってあげよう。

そう思いながらうさぎの頭をぐりぐり指で撫でてから、人がいる森の入り口まで歩いていく。



「こんにちは、今日はよろし……く……」



その集団に声をかけて、私はぴたりと歩みを止めた。

メンバーは男2人に女1人。


剣士、格闘家、ヒーラーと言ったところでしょうか、メンバーの役職のバラエティには不遜はありません。


でも……なんというかその……一言感想を言うのであれば……


「弱そう……」


「シーッ!!黙って!!」


うさぎが私の心で思っていた言葉を、小声とはいえ言葉を発して言ってしまった。


気持ちはわかりますわ、だってその場にいたメンバーは……

一人はヒョロヒョロの剣士、もう一人はチャラい格闘家

唯一ガタイが良さそうなのは女性のヒーラーなんですもの。


私は小声で大急ぎで注意しましたが、幸いに誰にも聞こえていないようです。


でも、レベル0のクエストだものね。

参加可能のチームなんて、こんなものね。

チュラット5体程度の話だし、まぁなんとかなるでしょう。


私は半ば諦めの気持ちを持って、待っている彼らに駆け寄り声をかけました。


「えっと、お待たせして申し訳ございません。

『チュラット討伐』のメンバーの皆様ですわよね?

私はじぇ……」


と、自己紹介をしようとしたのだけれど、

女性の人が「ストップ」とでもいうように掌を私の方に向けて止める。


「いいよ、そんなの。クエスト終わるまでの間だけだし」


「え?でも……名前を知らないで一緒に討伐するのは……」


あまりにも失礼なのではないだろうか。

これから一緒にクエストをこなしていくメンバーだというのに。


そう言おうとすると、ヒョロヒョロ剣士はこう言いました。


「でも、野良パーティーでいちいち名前聞いてたらキリがないし。

短い付き合いの相手の名前を覚えるのも勿体無い……というか」


「野良?短い?」


私はその言葉を聞いて目をパチクリとさせました。

このチームは、これから一緒にクエストを受けて行って、その後冒険する仲間に昇格するというものではないのでしょうか。


冒険家は、一回パーティーを組むと脱退を申し出ない限り固定だと聞いたのですが……


しかし、そんな私の細かい疑問に律儀に答えてくれる人はいなかった。

話は既に、この後のことに変わっている。


「そんなことより人数揃ったし、チュラット討伐行くよ。

大雑把な作戦としては、チュラット見つけたらすぐ報告、戦闘は剣士中心で、

後、魔法使う系の人に注意で……」


そう言ってパンパンと手を叩いて指示を出すのは、ガタイのいい女性だった。


「ちょっと、そこの魔法使いさん、聞いてる?」


尊敬の眼差しで彼女をみていると、私は女性にそんなことを言われた。

そうか、私のことか。


そういえば『魔法使い』で役職登録したんだっけ。


「すみません、なんでしたっけ」


「今回のクエストで大事なことだからちゃんと聞いてね。

『チュラットの肉』が欲しいらしいから、炎の魔法で燃やすのは厳禁で

やっちゃった場合は討伐数が一体増えると思ってね」


「わ、わかりました」


「よし、じゃあ森の中へ出発よ」


彼女はそういうと、みんなその後をついて森の中に入っていく。


それにしてもすごいな、あの人テキパキ指示出してて……

森の中に入ってからも、しっかり指示を出している。


もしかして、私以外レベルが高くないだけで経験者なんだろうか。


でもなんとなくそんな話にはならないまま、その時はきた。


「チュラット発見しました!」


剣士のヒョロヒョロ男がそう叫んだ。

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