第4話 回想2ー今後の予言ー

確かに、父とは血がつながっておりますが母は使用人で、とっくに屋敷を追い出されております。

それでも伯爵夫人は子供だけはと温情でこの家に置いていただきました。

とはいえ、いじめがあるわけでもなんでもありません。


「幸いにも姉妹はおりませんし、私生児の割には待遇は悪くありません

少なくとも家の利益にならないようなところには嫁がせないはずです」


「えぇ、利益になる相手との結婚は保証されるでしょう、

しかし、年の近い殿方と添い遂げられるかは少し微妙ですわよ」


「どういうことです?」


私がそう尋ねると、壁にかけられている、彼女は大きめの国の地図に視線を向ける。


「エスフィード伯爵は、ゼズム公爵から鉱山を買ったのではありませんでしたか?」


「えぇ、うちの鉱山事業での取引相手ですわ」


「でも、実入が悪いのではなくて?」


「……父の仕事に関しては、私にはわかりかねます」


皇太子妃の彼女にはそう答えた。

でも想像するのは難しくない、だって鉱山を持って何年も経っているのに巷で『エスフィード領のなんとか』と言う触れ込みの元売られている鉱物を見聞きしたことがないからだ。

魔石や宝石はおろか、鉄鉱石などの資源すら見つかっていないのは容易に想像ができた


「小説でゼズム公爵は、妖精使いのあなたか、結界魔法を得意とした私のどちらかの能力を欲しておりました。

そして、皇太子妃になれなかった小説の私は、あなたを引き摺り下ろすという利害一致のためにゼズム公爵と手を組むのです」


「それとこれとなんの関係が?『ビリアン家』のあなたが手を組まなくなることで、私になんの影響が」


本当はわかっている、少なくとも言葉を発している間には気がついていた。

そう、二人のどちらかでいいのなら……今余っているのは私だ。


「小説では、私が手を組んだからあなたに白羽の矢は立ちませんでした。

しかし現在私は皇太子妃で、ゼズム公爵は2人のうちのどちらかを欲している現実に変わりありませんわ。」


「まさか」


「近日、あなたの家の鉱山が赤字で閉鎖が余儀なくされるわ、そのタイミングであなたに縁談を持ちかけるはずよ」


その言葉を聞いて目眩を起こす、なんと言うことでしょう。

皇太子様と結婚できないのはまだいい、見た目が悪いとか爵位が低いとか、多少年上とかそう言うことだって目を瞑るつもりではおりました。

ただ……その話が本当なのだとしたら、ちょっとした歳上どころではない。


「ゼズム公爵って……もう60でしょ!?適齢の孫も息子もいないはずよ!!」


「金目的や若い娘目的で、そういうことをする貴族なんて珍しい話じゃないのは知ってるはずよ」


「彼は、皇太子がきさきを取るタイミングを待っているはず、そして負けた片方が執心している時に隙をついて取り入るつもりなのよ」



「そんな、じゃあ……このままだと私は」


「実際、調べてみたらその準備が進められているのを確認できたわ」


「そんな……ゼムズ公爵はこの国で皇族の次の爵位なのよ!よっぽどの理由がなければ断れないじゃない!」


本当の父と母の間に生まれた子供なら、多少渋って守ってくれるかもしれない。

でも、どれだけ悪くはされてないとはいえ、私は私生児で、義母様とは血がつながっていないのよ?

本当の子供のようには庇ってもらえない可能性が高いわ、簡単に切られるに決まってる

このまま家にいては、もう逃げられなくなる


私は焦ったからか、皇太子妃の胸ぐらを掴む


「そうなるってわかってて運命変えたの!?酷すぎるわ!」


「私だって、小説どおり言ってたら処刑だったのよ!?あなただって嫌な思いはしないでいいライバル関係でいられたんじゃない!」


「知らないことと比較されてもありがたみないのよ!それに、だからってジジイと結婚する未来なんて嫌!」


こうなったら、貴族なんてやめる!


「なので、今日はあなたに提案があって……」


皇太子妃が何か言っているけれど関係ない。



「皇太子妃様……この際、皇太子とあなたが結婚してしまったこと、これに関して一生恨まないことを誓いますわ」


そういうと、私は彼女の手を包むようにして、ぎゅっと強く握った。

そして彼女にこんな要求をした


「恨まない代わりに、私の逃亡(ゆめ)を全力で手伝ってくださいませんか?見返りなしで」

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