2022/12/21 バイト

「いらっしゃいませー」

 俺がお客を迎え入れると、客席にいた美羽は俺を見やる。

「やっぱり、格好いい……」

「まあ、美羽ちゃんは大輝くん一筋だよね~」

 クスクスと笑う飯田。

「早苗ちゃんは武雄くん一筋だからね。一緒だよ」

「ば、ばかぁ。まだ武雄に伝えていないのに」

 慌てて口を塞ぎにかかる飯田。

 美羽はそこの攻撃をよけて、言い終える。

「もう。そんなに気にしなくても伝わっているって」

「いや、あいつ。私が寂しいからクリスマスを一緒にすごそうとしているんだから」

「え。恋人だからじゃないの!?」

「そうなのよ。あいつ変に鈍いよ……」

「それなら俺の出番かな」

 俺は近寄り、飯田の悩みを解決しようとする。

「あー。大輝くん、何をするつもり?」

「さあな。でも飯田の気持ちを伝えるにはちょうどいいんじゃないか? クリスマス」

「え! 私が告白するの!?」

 飯田と美羽は驚いたように顔を歪める。

「ああ。そのくらいしないと、いつまでたってもずるずるだぞ」

「それは……そうだけど……」

 実際、飯田はこの一年間、いや二年近くでいつまでもくっつかずにいた。

 それもこれも武雄が鈍感なせいだ。

「あー。前にやった『月が綺麗ですね』はダメだからな。遠回しだとあいつ気にとめないからな」

「分かっているじゃん。言うなよ」

 飯田はねたように髪をいじる。

「まあ、頑張れ」

「ありがと……」

 苦笑いを浮かべる飯田。

 武雄と飯田も結ばれてほしい。

 心の底からそう思った。

 武雄にはあとでがつんと言っておこう。

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