2022/12/20 帰り道

「よ。お二人さん、お熱いね~」

 からかう口調で近づいてきた武雄。

「なんだ? 俺に用か?」

 訝しげな視線を向けると、武雄はふるふると手をふる。

「いや、悩み相談をしたいんだが……」

 武雄は困ったようにうつむく。

「なんだ? 言ってみろ」

 俺は大器晩成といった様子で武雄に続きをうながす。

 チラチラと美羽を見やる武雄。

「あー。美羽を外すか?」

「だ、大丈夫だ。むしろ聞いてほしい」

「そうなのか?」

 もしかして美羽に用事が?

 それはそれでムカつくが。

「おれ、早苗ちゃんに嫌われたかも……」

 武雄が思いきって口を開く。

「いや、ないない」

「ないね」

 俺に続くように美羽が援護射撃をしてくれる。

 あの飯田が武雄を嫌うはずがない。

 でも話を聞いてやる必要はあると思う。

「で。何したんだ?」

「可愛いな、って言ったら顔をまっ赤にして『何言っているのよ。バカ』って」

「あー」

 それは怒っているのではなく、照れているのでは?

 俺は美羽と目線を合わせ、言葉にする。

「照れているだけだと思うぞ」

「照れている? あの早苗ちゃんが?」

「いやいや、気づけよ。まったく鈍感な奴」

「照れていたのか……」

「はい。悩み相談終わり」

 俺はそう言ってパンと両手を叩く。

 そして美羽に話しかける。

「寒いだろ。肉まんでも買っていくか」

「うん。コンビニ近いし」

 俺と美羽は武雄を振り切り、コンビニで肉まんを買って食べた。

 武雄、鈍すぎ。

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