2022/12/18 水族館

「今日はありがと!」

「なんだよ。突然」

 俺たちがイルカショーを見終えると、美羽がそんなことを言う。

 水はかからない、離れた位置にいたが、それでも迫力のあるショーだった。

「いいじゃない。こんな時間を作ってくれたのだから」

「ああ。お陰でバイトが忙しくなりそうだ」

 苦笑しながら答えると、美羽は少し寂しそうにする。

「クリスマスはわたしと過ごしてね?」

「もちろんだ。男に二言はない」

 俺は胸を張って答える。

 来週のクリスマス。確実に楽しいものにするぞ。

「うん。ありがと。やっぱり大輝と一緒にいるのが楽しいな~♪」

 ニコニコ笑顔で、美羽はステップを踏む。

 そんな美羽がいとおしい。

 ギュッと抱きしめると、美羽は驚いたように目をまたたく。

「す、すまん」

 ちょっと離れると、俺はポリポリと頬を掻く。

 と、腹の辺りの服をギュッとつまむ美羽。

「もっと、して……?」

「あ、ああ……。もちろんだ」

 俺はもう少し抱擁を楽しむと、時間いっぱいまで水族館にいた。

 お土産コーナーで買った青と赤のイルカのキーホルダーが鞄で陽光を反射し、光っていた。

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