2022/12/13 帰り道

「武雄」

「おう。なんだ?」

「補習は大丈夫か?」

 俺は眉根をつり上げて問う。

「まあ、なんとかなった。お陰様だな」

「それならいい」

 俺と武雄二人で帰るのも久々だな。まあ実際には――。

「しかし、実沢さねざわと帰らなくて良かったのか?」

「それは大丈夫だ」

 俺はあらかじめ美羽に伝えてある。

「それより飯田さんのこと、どう思っているんだよ?」

 俺はニマニマした気持ちを抑え込み、いたって冷静に訊ねる。

「あー。おれの大事な友達だな」

「友達以上は目指さないのか?」

 ぶんぶんと両手を胸の前で振る武雄。

「そ、そんなぁ!? 滅相もない!」

 それ、俺に言うセリフか?

「どういう意味だ?」

「おれ、鈍感らしい。だからみんなに迷惑をかけてしまう。それがたまらなくしんどい。そんなおれと飯田は釣り合わないのだ」

 武雄はどこか遠い目をして暗がりを歩く。

「釣り合うと思うぞ。でも、もし借りに釣り合うんだったら、付き合いたいか?」

「それは! もう!」

 武雄は大きな顔を俺に近づけてくる。

「お、おう……!」

 俺はちらりと後ろを見やる。

「そんな大輝は実沢さんとうまくいっているのか?」

「ま、まあな。仲良くデートしているさ」

 俺はちらりと後ろを振り返り、声をあげる。

「だってよ。飯田。美羽」

「なによ。武雄は私と釣り合わないと思っているわけ?」

 飯田がまず声を上げる。

「デート。今度もしよ、ね?」

 美羽が小首を傾げて、俺に尋ねてくる。

「もちろん!」

「あのー、おれたちは?」「私は?」

 武雄と飯田を無視して俺と美羽は二人っきりの世界に迷い込んだ。

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