2022/12/12 学園

 学校に来てみれば、みんなそわそわした様子で、談笑をしていた。

 今日はテスト開け最初の授業。恐らく解答用紙とともに成績が明かされる日。

 俺は余裕の心持ちで美羽と一緒に教室に入る。

「よ。武雄」

 巨躯を見つけて、俺は手を上げる。

 そんな武雄は飯田と一緒にいた。

「もう。聞いてよ、美羽ちゃん」

 美羽に泣き付いてくる飯田。

「あー。どうした? 武雄」

 俺は武雄のフォローをしようと近づく。

「おれは何もしていないぞ。ただ、クリスマスは家族と過ごすと言っただけで」

「あー。それだな」

「え! どれ!?」

 武雄は訳も分からずに目を回す。

 鈍感な武雄じゃ、無理か……。

「飯田と一緒にイルミネーションでも観に行ったらどうだ?」

「そ、そうか。でも今年は姉ちゃんに子どもが産まれたんだ」

「おいおい。それよりも大事なものがあるだろ?」

 俺は言い含めるが、武雄はしぶる顔を浮かべている。

「むぅ。確かに友は大事だが……」

 まだ飯田の気持ちに気がついていないのか……。

「早苗ちゃん暇だからクリスマス一緒にいてあげて、武雄くん」

 美羽も放っておけないらしく、陰ながらデートを薦める美羽。

 ナイス。と思いながら、俺も薦める。

「ほら、少しでも時間を作ってやれ」

「むぅ。そういうことなら……」

「やった!」

 ガッツポーズをし、嬉しそうに頬を緩める飯田。

 こいつもけっこう、可愛いんだよな……。

「そ れ よ り!」

 美羽がその細身の身体を俺に押しつけてくる。

「テストはどうだった?」

 美羽は飯田と武雄に聞くが、二人とも暗い顔をする。

 あれだけ勉強したのに……。

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