2022/12/03 武雄の家

 武雄たけおの家は学校から離れたところにある。

 電車で二つ行った駅から自転車で十分ほど。

 そこに集まる俺たち。

「もう。なんで武雄のうちなのよ」

早苗さなえちゃん、こうでもしないと近づけないでしょ?」

 あのバイト辞める宣言のあと、飯田いいだ早苗は武雄にアタックすると決めたらしい。

 美羽が手助けするように決まった今回の勉強会。

 学校に近いのは俺のアパートだけど、飯田のために一肌脱いだ、ってところか。

 美羽も世話焼きだな。

「おう! 待っていたぞ、みんな!」

 大柄で筋骨隆々な武雄はその分厚い手で招き入れる。

「お邪魔します」

 そう言ってあがる俺たち。

 武雄の部屋は、その住人である大柄な武雄のせいか、狭く感じた。

 ガラスのテーブルに座布団が三つ。

「お客様だからな! 座ってくれ」

 そう言って座布団を差し出す武雄。

「いや、俺が床でいいぞ」

「なに言っている。皮が分厚いのはおれだろ?」

 武雄、いい奴。

「分かった。ありがとう」

 ここで口論するのも違うと思い、甘んじる。

「さあ、勉強を始めよう!」

「へーい」

 乗り気なのは俺だけらしい。

 成績は、美羽は平均的で、武雄は下の方、俺ができるけど、飯田は高得点。

 自然と俺が美羽に、飯田が武雄に教える形になった。

「うおう。わかんね☆」

 武雄がチャーミングな笑顔を見せて、頭をガシガシと掻く。

 美羽は俺の肩に手を乗せて呟く。

「わかんない」

「この方程式を使うんだ。これは暗記するしかない。あとは順番の問題だ」

「もう。いじわる……」

 唇を尖らせ、頬を小さく膨らませる美羽。

 でも勉強だからな。

「俺はみんなと一緒に卒業したいからな!」

「むう。分かったよ」

 美羽は必至に数式を解くようになった。

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