2022/12/02 図書館

「スペインに勝ったね」

「そうだね」

「全然のらないじゃん」

「だって、今月末の試験の方が大事だろ? サッカーより」

 不服そうに唇を尖らせる美羽。

「もう。早苗ちゃんのバカ……」

「なんで飯田が出てくるんだよ」

「なんでもなーい」

 ぷりぷりと怒る美羽。

 なんだか今日は不機嫌だな。

「図書館に来たんだから勉強しようぜ?」

「はいはい。頭でっかちくん」

「おい。いつも通り大輝でいいんだぞ」

 俺が今度は不服になる番だった。

「でも大輝の夢は作家でしょ? サッカーみないと!」

「……だじゃれ?」

 恥ずかしいのか、あるいは怒っているのか、かぁああと赤くなる美羽。

「つ、つまんないこと言ってごめん!」

 どうやら前者だったようだ。

「ギャグの解説とか、一番ダメじゃん……」

 がっくりとうなだれる美羽。

「いや、図書館にいて騒いでいる方が問題だぞ?」

 コホンと咳払いをする司書さん。

「あ。はい。すみません」

 美羽はしげしげと謝り、席に着く。

 俺の隣の席に。

 座ると頭を肩に寄せる美羽。

「ここはわたしの特別席。譲らないだから」

 美羽はクスッと笑い、子どものように甘えてくる。

 そんな彼女が愛おしい。

 嬉しい。

 幸せだ。

「明日、勉強会しよ?」

「いいね。それならあの二人も呼ぶか」

「それもいいかも」

 嬉しそうに目を細める美羽。

 ドキドキする。

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