2022/11/30 部活

 俺はパソコンでWEB小説投降サイト【カクヨム】で『異世界召喚に失敗!? クソ雑魚な俺が世界最強を偽る!?』を読んでいると、隣にいた美羽が大きなあくびをかく。

 つられてあくびが漏れる。

「つまんないなら読まなきゃいいじゃん」

「いやでも、応援している作家さんだし」

 困ったように頬を掻く俺。

「そんなの関係ないでしょ。自分が楽しまなきゃ」

「あー。まあ、楽しいときもあるんだよ。ただ今の章は説明ばかりで……」

 たはは、と乾いた笑いを浮かべると、唇を尖らせる美羽。

「小説に夢中で、わたしにかまってくれないんだもん……」

 なんだ。この可愛い生き物は。

 俺は美羽を抱き寄せると、そっとささやく。

「何をして欲しいんだい? 今日は一段と可愛いな」

「もう! こんなときだけ優しいんだから……」

 呆れたように呟く美羽。

 立ち上がり、文芸部の端にある緑茶を取りに行く美羽。

「なんだよ。俺だって美羽が好きなんだぞ」

「そういう問題じゃないって」

 なんだか不機嫌な美羽に困り果てる俺。

「わたしも投稿しているのに……」

「え? なんだって?」

 美羽の言葉が小さくて聞き取れなかった。

「もう。なんでもない」

 プリプリと頬を膨らませ怒っている美羽も可愛いな。

「今日はもう帰る」

「待てって」

 俺は美羽の後を追いかける。

 部長にはあとで言っておこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る