2022/11/28 学校

 裸部利らぶり高校。

 二年の教室にて、二人の男女がいた。男は席に着き、女はその近くでもじもじとしていた。

「あの、大輝だいき

「何?」

 明るいトーンで紡がれたその言葉は胸をドキドキさせる。これはこれで気分がいい。

「あのさ……」

 何やら言いにくいことらしく、言葉に詰まる美羽みう

「なんだ?」

 神妙な面持ちになる俺。

「ええっと……」

「そんなに言いにくいなら無理するな」

「や、でも……」

 もじもじとして恥ずかしそうに後ろ手組んだ指を動かす美羽。

「おっす!」

「おはよ、武雄たけお。すごいなお前」

 朝のホームルームが始まる前の時間。

 俺と美羽の間に割って入った武雄。

 彼も、俺と美羽が付き合っているのは知っている。そこに入ってくる勇気は一般的にはない。

 だから俺もつい褒めてしまった。

 興がそがれたのか、美羽は自分の席に戻る。

「いいのか?」

 武雄は俺に尋ねてくる。

「まあ、言いたいことがあればメッセ飛ばしてくるっしょ」

 俺はそんな甘い考えで武雄との会話を始める。

「そ、そうか? 女子はこういったとき、追いかけてほしいだろ?」

「武雄にしては珍しく女心を語るな」

「いや、だって。ずっと見てくるし……」

 武雄がその頭をポリポリと掻いて困ったように眉根を寄せる。

「ああ。分かった。行くよ」

 俺は立ち上がり、美羽に駆け寄る。

「それで何を話したいんだ? 美羽」

「知らない」

 ぷいっと顔を背ける美羽。

 明らかにねている。

「可愛いな。お前」

「え!」

 美羽の顔に一瞬で火がついた。

「もう。もう。もう!」

 それは美羽が照れているときに言う言葉。

 やっぱり美羽は可愛い。


 しかし、何を言いたかったのだろうか? 気になる。

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