きみのひみつ

「博士、ホントに行くの?危ないことされない?」



荷造り、とは言ってももともと荷物は少ない。なので布に必要最低限の物をくるんだだけ。後はコートのみ。

都心は砂漠におおわれている地下都市なので、砂避けが必要だ。

一号にも簡易な砂避けコートを作ってかぶせる。必要ないとは思うが、一応精密機器。


「ボク、ジェードくんもレプシナくんも兄弟だってことはすっっごく嬉しいんだけど…

都心に行くの、なんだかこわいの」


「―――まぁそうだろうねぇ」


ジェードの声。ドアを背にして寄り掛かっていた。

警戒すると同時に、一号は俺を庇うように前へ立つ。それを見てジェードは手の平をさらす。


「なんにもしないよぉ。

僕は何もしない、これは約束できるともっ」


一号の肩に手を置き、またぶっ飛んでいかないように気を付けながら…彼に向き合う。

視線は真っすぐなのに、遠くを見ているよう……明らかに他の兄弟型とは違う位置。記憶を司る部品、だったか。


「お前には色々聞きたいことはあるが…まず都市に行かなければ行けない理由はなんだ?

一号……ゼロキではなく俺が、何故呼ばれる?」


「僕じゃなくてぇ、レプシナの管理者であるプリコット博士からの要請なんだ。

行けば分かるさ…何もかも、全てね」


言いたいことだけ言って、ジェードは部屋から出ていった。一号は心配そうに俺を見上げてくる。

あいつは嘘もついてない。でも言ってることは一切分からない。


分からないまま、レプシナが再度このれ屋を尋ねてきた。外には大型ジープ。


「まさか、運転してきたのか?」


「はぁ? アンタ、オートマって知らねーの?」


知りませんでした。

ジェード含む四人が車に乗り込むと、車は勝手に走りだした。ハンドルはない。

俺が都心にいた時、森まで行ったバスは運転回路が内蔵されてる擬似運転手がいたんだけど、さすがに進化している。


「レプシナ。プリコット博士のことなんだが、どんな人なんだ?」


「そんなん自分で調べろよ…。

仕方ねーな…えーと、独自の手法をもって、国の技術レベルを大幅に躍進させた、今や機械工学の権威。

学院などからの支持率は高いし…まだ若年だから女性問題が絶えない。ま、全部デマだけど。

一般的見解だとそんなところか?」


そんなところじゃなく、人柄を聞きたかったが…いよいよ都心部に近づいてきたらしく、窓から見える砂煙が近くなっていく。


「オートマを知らないようなら、この崩壊都市の再利用方法も知らないな?」


少し誇らしげに、レプシナは砂煙に埋もれた都市に目をやる。


「この崩壊都市はな、生まれ変わったんだ。

自然の力を全て地下の動力に還元する―――地下都市の繁栄を約束する再生部品として。

それを提唱したのが、プリコット博士なのさ!」


自らの事のように誇らしく笑うレプシナ。

彼が本当にプリコット博士を尊敬していることがよく分かる。

…大切にしてもらっているんだな。


「地下の中央最深部にラボがある。そこに博士がいらっしゃるので、はぐれるなよ」


レプシナの言葉に頷いたが、そこは俺やツァンが以前いたラボなので迷うわけないのだった。

…昔のことは、忘れていても。

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