5-9 シン・家族カンファ(レンス)……の裏

◎エピソードタイトルの元ネタ


 映画『シン・ゴジラ』のタイトル、および同作の劇中に登場する「総理レク(チャー)」という表記より。新しい家族へ生まれ変わるための話し合いですし、義花が医療者を目指すなら「カンファ(レンス)」にかなと。



◎エピソードの狙い


 義花&咲子のカップル成立見込みを提示しつつ。ひたすら、今後の方針をすり合わせる回です。『シン・ゴジラ』でも描かれましたが、こうしてテキパキと事実確認を進めていくリズムが大好きで……だからこそ、ここまでスムーズに話がまとまるまでのゴタゴタにはたっぷり尺を割きました。全員が納得したからこその今回。


 本作はそれぞれが「自分が与えられた分だけ、何かを手放す」物語です。あるいはその逆、奪われたからこそ与えられる物語。


 母親を喪った後に咲子という最愛の人と結ばれ、咲子と結ばれるために心身穏やかな人生を諦めた義花。

 義花との未来を諦めた代わりに結華梨と結ばれ、義花に傷つけられた以上に彼女を通して成長できた仁輔。

 二重の意味で実穂を奪われた後に、ハードルだらけの義花への恋心を叶えられた咲子。

 義花を世話することで自分のキャリアを支えてくれた咲子のために、全力で彼女たちのサポートをし親友に頭を下げる康信。

 自衛官と父親という二つの夢を支えてくれた咲子だからこそ、浮気も離婚も許せた岳志。彼はそのきっかけとなった義花からも多大なリスペクトを贈られています。


 ……という構図を総復習するような回でもありました。

 一番「その立場でそれはマズイやろ」をやらかしたのも咲子ですが、一番奪われたのも与えてきたのも咲子だろ思うのです。だから、彼女の望みを全員で叶えて終わるのが相応しいかなと。



 そして後半では、義花が社会に抱く諦観めいた心境が語られます。

 彼女の世界観はやや入り組んでいるのですが、分かりやすく言うと「自分が生きていく場所を持続させたい、そのために出来ることをしたい」「けどそこに生きる他者からの承認は求めていない」になります。なので余所の親子のために必死で頑張ろうとしているし、本当の自分を世間に見せないことにも納得してしまう。

 母の不在に始まり、幼い頃から社会の不安定さを必要以上に理解してしまった義花の、シビアな世界観。社会が優しくしてくれることに期待しても仕方ないから、すぐそばの大事な人を大事にしよう――という発想で、咲子への依存心がより高まったとも言えそうです。


 ちなみにこのパートを書いているときにやっと気づいたのですが、義花の精神的なタフさは嫉妬心の異様な薄さから来ているかもしれません。ここまで「他人と一緒の幸せが欲しい」という感情と無縁でいられるのは、結構レアな気質なのでは。

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