5-8 I Will Take You Over. ……の裏

◎エピソードタイトルの元ネタ


 前回に続きP5Rの『Take Over』より。岳志を受け継ぐのだという義花のケジメ。



◎エピソードの狙い


 旦那さん、あなたの奥さんをあたしにください! ――みたいな交渉&説得回。略奪愛クライマックスですね。


 まずは岳志、きっちり筋を通します。咲子が義花に惚れたことを謝り、咲子から実穂への想いを軽視していたことも正直に告げる。咲子との夫婦関係が冷えていることも、咲子に離婚の自由があることも明言する。

 そうして自分の非を語ったうえで、義花の不義を糾します。家族ぐるみの付き合いから発展した恋愛関係だからこそ、その仲が義花にとってハードルになる。


 お世話になった大人に仇を返す立場にあることを、義花はよく分かっています。だからこそ、徹底的に大人たちへのリスペクトを示す。「あたしを大人にしてくれた人たちに報いたい」という決意をぶつけ、岳志からの叱責に対してもブレさせないことで、不義に釣り合う仁義を示す。

「咲子に支えられて誰かのために頑張る」という立場を岳志から継ぐ――ただ奪うのではない、というエクスキューズにありったけの真剣さを込める。


 最終的に、岳志は義花を認めるのですが。それは仁輔と義花が二人とも、自分の背を追ってくれる後輩だと分かったから……という理由が非常に大きいと思っています。あくまで僕の認識ですが、何か真剣にやってきた人間に一番効くのは「あなたに憧れてここまで来ました、ここからは私が頑張ります」という後輩の存在なんですよ。ただの敬意や賞賛ではない、継承という最大の報酬を得られたからこそ、岳志は身を引くことに納得できた。


 義花&仁輔の対話でも触れられた「故郷のため、共同体のため」というマインドは、岳志にこそよく響きました。人生はもらったものを返す旅、その返し方を自分で選んで納得できればいい――というのは普遍的な原則なのではと、僕は思っています。

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