003 妖刀は甘味が好きってか?
ん?何…宗さん?呼んだ?
「この寝てる方が【宗さん】ですか?」
あ、、うん。宗さんずるいよ。
おいらの名を呼ぶだけ呼んどいて寝るなんてさ…困るよ…
「困りごとですか。ヒ… ヌギマショウカ?」
うん、どうぞ。
それよりさ、ここのお菓子美味しいよね。
「ヌギマスよ??」
うん、脱いで。
その代わり君のお菓子、もらってもいいかな。
「そのお菓子は美味しいのですか?」
もちろんだよ!宗さんがおいらの好みに合わせて厳選してくれた
こしあんのまんじゅうだからね。
「えっ?!こしあんですか?」
そう、こしあん。おいら、こしあんが好きだからね。
宗さんはそれを知ってるから粒あんは用意しない。
「あ、、あのアナタ… えっと名をなんとおっしゃる?」
伊庭だけど?
あ、あの…伊庭殿。ちょっとお願いが…。
何さ?
「ワタシもこしあんが好きなので、ヒトツ私に分けて貰えませんか?」
でさ、その君は一体誰なのさ?
「驚かないで下さいね。ワタシは千子村正。」
刀なのに、こしあんが大好物なのかい?
「は、、はい。そうです。」
じゃあ聞くけど、千子村正って徳川家は嫌いなの?
「いえ、そんなことはありません。」
じゃ、たまたまそう言われる様になったってこと?
「そうですねぇ。特に個人的に恨みはありませんよ。」
ふーん。それなら1つだけわけてやるよ。
1つだけ!わかった?1つだけだからね。
「ありがとう!アナタいい人ですねぇ。」
同じこしあん好きと聞いちゃあげないよわけにいかないよね。
「では、こしあんのお礼にヒトハダヌギマショウカ?」
さっきから脱ぐ!脱ぐ!って言ってたのは、一肌脱ぐってことなのか。
「そうですよ。なんだと思ってたんですか?」
いや、着ているものを脱ぐのかと思ってさ。
「こう見えても千子村正!人様にお役に立ちたいのです!」
刀を持った人全員に言ってるの?
「はい、聞きますねぇ。」
でもさ、そんな眉唾みたいな話に乗っかる奴もいやしないだろうに…。
「そうですねぇ…。でもついこの間の
刀に頼むって何を頼むのさ?
「刀に頼むとなれば誰かのお命ですねぇ。」
へーっ他力本願で人の命って…町人かい?
「いえいえ、幕臣ておっしゃってましたよ。」
幕臣?まさか…
「そのまさかです。」
誰の命なんだろう?
「徳川の名のつく方ではないのですよ。」
それならいいか。まさか宗さんじゃないよね?
「あ、どうでしょうねぇ。この宗さんって方の苗字は何とおっしゃるのですか?」
宗さんの苗字は沖田、沖田総司。
「沖田さんではないですね。」
それならいいや。
「気にならないのですか?」
じゃ一応聞いておくよ、誰?
「ヒミツです!」
教える気ないなら聞かせるなよ…。
「じゃ少しだけヒント…book のつく人です。」
ひんと?ぶっくぅ?なにそれ…ますます、わかんねぇや!
何が分からねぇって?秀頴。
だってさ、この人が人の名前なのに「ぶっく」って言うからさ。
確かにそんな名前の奴はいねぇな。
「でも、ワタシは確かにヒトハダヌギましたよ?」
それなら、そのうち誰かが誰かを闇討ちするってことか?
本当なら、そうなんじゃないの?
それよりさ宗さん、おいらの食べる分のこしあんのまんじゅう減ったんだけど
どうしてくれるのさ?
どうするって…買いにいけってか?
あーー今日はいいかな。客人?客刀?もいるしね。
「あ~ら、ワタシお邪魔だったかしら?」
邪魔といえば邪魔なんだけどさ、この件があったから会えたのもあるし…
おっ秀頴、お礼に脱いでみるか?
いってーーーーっ!
宗さん!殴るよ!!
もう殴ってるじゃねぇかよ!
えへへっ。バレた?
バレバレじゃねぇか!ひでぇなぁ…。
宗さん、よしよししてあげる。
あれ…?
どうしたの、宗さん?
千子村正がいねぇ…。
えっ?刀もなくなってる?
いや、刀はある。
用事済んだんだよ。
そうか、それなら悪さもせず大人しくしててくれるんじゃねぇか?
なぁ秀頴。やっぱりいつ見てもキレイだねぇ。
もう!宗さん!
すぐにそういう方向の話になるんだから…。
いやかい?
あ、いや…そうじゃなくて…
じゃいいじゃねぇか…
またいつもの2人の夜が更けていった。
~~~~~~~~~~~~~
その夜は憑りつかれた様に辻斬りに行くこともなかったので
村正は妖刀ではないと判断され今井さん戻された。
その数日後、坂本龍馬が暗殺される事件が起こった。
後年、この暗殺の実行犯は佐々木只三郎だと今井信郎によって証言されている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます