第10話

霧野きりの彼方かなた


突然の届け物をしてしまい、ごめんなさい。

私のこと、覚えているでしょうか。

中学二年生の時、クラスが同じだった桂木彩子です。


今は女優業をやっています。

映画にも出演できて、この仕事始めてよかったな

と思っています。


ただ楽しいことばかりではなかったです。

色々つらい事もありました。

そんな時にいつも支えてくれたのは、

あなたがくれた似顔絵です。

あの似顔絵、まだ持っているんですよ。

あの絵を見ると、元気出さなくちゃって、

いつも励まされました。


あなたが食品会社にお勤めなのは、

以前より知っていました。

タイムヌードルのニュースが出た時、

あなたの名前を見つけて、びっくりしました。

ああ、元気にやっているんだなあと、

思っていました。


今はあなたの絵の代わりに、

私を支えてくれる人ができました。

その人と結婚します。

ただ私の中で整理しておきたい気持ちがあり、

この手紙をしたためております。


あなたに伝えておきたかった気持ちがあるのですが、

どうすればよいか、悩んでおりました。

そこで思いついたのは、あなたの作った商品なら、

伝わるんじゃないかと思い、

プロダクションのほうで企画を進めていただきました。


私のあの時の気持ちを知っておいてほしい。

想いをいっぱい詰めたタイムヌードルを、

ご試食いただけると幸いです。


私の大切な思い出をプレゼントします。

本当にありがとうございました。


夢野 遥

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