第4話

「何か起こるわけでもないが……このどこにでもあるような家庭の幸福が体感できるのが、このコンソメ塩味のおいしさの秘訣だな」


 食事をおいしいと感じる知覚のうち、味覚が占める割合はわずか1%、残りの99%はそれ以外の視覚、聴覚など他の五感で決まってしまう。

 即席食品においても同様と考え、うちの会社で開発されたのが、この「タイムヌードル」。

 僕はこの食品会社の研究員をしており、次の製品企画を担っている。


 コレクションマニアもたくさんいるが、僕もその一人だ。そして、どうしても手に入れたい一品がある……

「昼休みの時間はまだあるな、コンビニに行って、例の新製品をなんとか入手しないと」

 今日はコンビニオリジナル数量限定の超レアタイムヌードル発売日だ。これだけはどんなコネを使っても、入手は不可能。一般消費者と同じように店頭で買うしかない。

 

「明日、コンビニ限定のタイムヌードル、発売されますよね?」

「ああ、夢野遥シリーズですね」

「予約とかできないんですか?」

「そういう問い合わせしてくるお客さん、多いんですよね。あれは数がないんで無理ですよ」


「……じゃあ、何時くらいに入荷予定でしょうか?」

「入荷時間ですか? わからないなー、早ければ昼便で届くんじゃないですかね?」


 昨日のうちにリサーチは済ませておいた。今から行けば、ちょうど店頭に並んでいる頃だろう。僕は席を立つと、給湯室のごみ箱にカップを捨て、急いでコンビニに向かった。

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