第3話

「お母さん、見て見て、ブロッコリーがこんなに大きくなってる」

「もう収穫の時期ね、今日はポトフにしようか。玉ねぎとキャベツも採っていきましょう」

 少女は、家庭菜園のキャベツを両手でわしづかみにすると、思い切り引っ張り上げた。


「あいたた」

 勢いが良すぎて、尻餅をついてしまったようだ。ほのかな痛みが伝わってくる。


 僕はもう一度、麵をすする……


「さあ、できたわよ、召し上がれ」

 少女は、スプーンでスープをすくうと、ふーふーと息を吹きかける。

 口に入れると、「あつっ」と声が出た。

 でもそれと同時に口に広がる、採れたての野性味あふれるジャガイモの風味。

「おいしい」


 僕の鼻をくすぐる香辛料の香り。


「ただいま」

「あ、おかえりなさーい、パパ」

「あ、お帰りなさい、あなた」

「ただいま、ママ」

 母親の頬にキスをする父親。


「お、今日はポトフだね、美味しそうだ」

「ええ、農園で採れた野菜を使ったの。あなたのおばあ様には敵わないけどね」


 少女はフランス人の祖母を持つクオーター、家族三人で仲良く食卓を囲む……


 僕はカップのスープを飲み干した。

 白い湯気とともに、その情景は徐々に消えていった。

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