第6話

「ふふふ、どうしたの? 動揺が顔に出てるわよ」

 彼女との心理戦だ。捨てたカードを見せたのはハンデじゃない、僕を迷わすための手段。だとすると、精神力で打ち勝つしかない。


「さあ君の番だよ。早くドローしてちょうだい」

 どうする、ここで負けるわけにはいかない、諦めるな。

 クラウンをじっと見つめて考えた……そうか、最後の可能性に賭けてみるか。

 現実に奇跡はないと言っていたが、これはポーカーだ。奇跡を信じてみるのも悪くない。これは度胸の試しあいだ。

「わかった、僕の捨てるカードはこれに決めた」

 僕はバシリと勢いよく一枚のカードを場に捨てると、一枚のカードを山札から引いた。


「それじゃあ、カード公開。ショーダウン!」

 クラウンが手持ちのカードをすべてさらした。

 ハートのエース、キング、クイーン、ジャック、そしてテン。

「ハートのロイヤルストレートフラッシュ。これに勝てる役はない。残念だけど私の勝ちね」

「いや……僕の勝ちだ。ハートより強い、スペードのロイヤルストレートフラッシュ」

「すでにスペードのエースが出ている。そんなことはありえない」


 僕は手札をすべて場に広げた。

 スペードのキング、クイーン、ジャック、テン、そして残る一枚は……ジョーカー!

「ジョーカーはワイルドカードだ。すべてのカードの代わりとなる万能のカード。これをスペードのエースとして使わせてもらう。君のピエロの姿を見て思い出した、ポーカーにはもう一枚の切り札があるということを」

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