第8話
テロスはふうとため息をつくと、
「よいかな、御三方。その者はアルシアではございません……。何故ならアルシアはまだ生きているからです。アルシア、ここへ」
「はい」
その返事とともに、もう一人のアルシアが本堂に入ってきました。アルシアが一礼すると、三人は驚きの表情を表したまま、ぽろりと言葉をこぼしました。
「アルシアが……二人!」
「御三方、私はなんとか争いを終わらせるために、不可能であろう難題を皆様に投げかけました。しかし、よもやアルシアと瓜二つの娘を連れてくるとは想像もしておりませんでした」
今度はそれを聞いていた造られたアルシアが、動揺の声を漏らします。
「私は……アルシアではない?」
絶望の表情を示したアルシアを見て、三人は急いで庇います。
「アルシア! お前は間違えなくアルシアだ」
膝から崩れ落ちそうになったアルシアに三人は駆け寄り、体を支えました。
その様子を見たテロスは三人に提言します。
「いかがでしょう、科学、魔法、超能力、どれが欠けたとしても万物の根源は語り尽くせません。それよりも皆様方の想いがひとつとなった彼女こそが万物の根源とするほうがよろしいのではないでしょうか? アルシアという名前よりも大事なものが皆様にもおありではないのですか?」
悲しむアルシアの面持ちに、三人の心は痛みました。
三人はお互いの顔を見合わせると、うむと頷きあい、口を揃えて言いました。
「そうだ、まさにこの娘こそ万物の根源を具現化した者。この娘をその象徴としよう」
本当のアルシアはその言葉に安堵し、もう一人のアルシアに話しかけました。
「私達、双子の姉妹みたいですね。でも同じ名前だと混乱するから……アイシアなんていかがでしょう?」
「良い名だな。唯一無二の我々の娘の名。それでよいかな? ……アイシア?」
「……はい、お父さん」
アトモスからの問いかけに、アイシアも笑顔で応えました。
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