第5話

 翌日、三人がアトモスの部屋に集まると、寝台の上に美しい少女の人形が眠っておりました。

「おお、本物そっくりではないか。なかなかやりおるのう、アトモス」ロゴスは髭をいじりながら、満足げに呟きました。

「我々の技術を使えば、精巧な人形を作ることはできる。しかしこのままでは動かん。次はロゴス、お前の番だ」


「まかせるがよい、この娘を目覚めさせてやろう」

 ロゴスは人形の頭を抱え、口元に硝子瓶がらすびんを寄せると金色の秘薬を流し込み、寝台から少し離れた場所で呪文を唱え始めました。

「大いなる天のいかづちよ、この器に降り注ぎ命を授けよ。ライトニング!」

 バリバリッと雷が人形に落ちると光の火花が全身に走り、人形の体はびくびくと振動し、目をパチリと開けました。

「おお、目を開いたぞ」

 しかし人形の動きはぎこちなく、ギリギリと腕を小刻みに震わせました。


「ここからはアペル、お前の役目だ」ロゴスに告げられると、アペルは不敵な笑みを浮かべます。

「十五歳の少女像を印象して、感情と意識の念を練り上げた。これを人形に与えよう」

 アペルは右手を前に出すと、青い光の玉が浮かび上がりました。

 はっという掛け声とともに人形目掛けて玉を打ち出すと、それは人形の胸に吸い込まれ、まもなくすると寝台からゆっくりと起き上がりました。

 人形の動きはとてもなめらかで、どこから見ても自然な人間の少女の姿をしておりました。少女は辺りを見回した後、三人のほうに顔を向けました。


「アルシア、我々のことがわかるか?」

 アトモスが問いかけると、少女はキョトンとした顔をしておりました。

「アトモス、彼女にはまだ記憶がない。これから色々なことを教え、アルシアに仕立てあげる必要がある」

 ロゴスが口をはさむと、次にアペルがアルシアに話しかけました。

「君の名はアルシア、十五歳だ。よく覚えておきなさい」

少女はぼそぼそと口を動かしましたが、おそらくこう呟いていたのでしょう。

「アルシア……」

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