無限の太陽電力! 勇者パーティーを追放された支援職の僕は、【ソーラーパネル】で勇者の元を去って来た聖女たちを輝かせます。~勇者の聖剣が輝かなくなった? あ、それ電池切れです~
第6話 マーク、モヒカンにからまれて腕相撲をする
第6話 マーク、モヒカンにからまれて腕相撲をする
僕は今、冒険者ギルドにて窮地に立たされている。
登録料免除のためにはパンチング水晶1,000P以上の数値が必要だが、出力調整を間違えて「測定不能」にしてしまった。
「測定不能だなんて~はじめてです~」
ギルド受付嬢のタリアさんが困惑の声をもらす。
ですよねぇ。これじゃ免除はしてもらえないぞ。
う~ん、なんとかやり直しの状況にもっていけないだろうか。
考えろ、考えるんだ! 登録料を準備していたら持ち金が尽きてしまう。
「マーク先輩! 先輩!」
ルルリアが僕の服の袖をユサユサする。
ちょっと待ってくれ、いま打開策を考えてるんだ。
「マークさん~難しい顔してないで~登録カードを作成しますよ~」
「いや、え? カード? 登録料払ってないんですけど」
「登録料は免除ですよ~上限ポイントを振り切って測定できないなんて~見たことないです~マークさんは超有望株ですね~」
「やっぱりマーク先輩は凄いです!」
どうやら、測定できないほど凄いという判定になったようだ。
普通に水晶の修理代とか言われるかと思ったのに…
まあとにかく良かった。これで冒険者登録ができる。
そんな僕らのやり取りを見てたのか、鼻息を荒くして近づいてくる人影。
「おい、おい、おい~ちょっと待てよ~なにが測定不能だよ~てめぇ」
モヒカン頭のデカい男が、ニヤニヤしながら近づいてきた。
鎧と手袋がなぜかピンクだ。まったく似合っていない…
「ああ、マークさん相手しなくていいですよ」
タリアさんがはぁ~とため息をついた。
そんなタリアさんのため息など一向に気にせずモヒカンは僕らの前にズンズンと距離を詰めて、下卑た声をだす。
「おいインチキ野郎、水晶に細工しやがったな~」
タリアさんのいうとおり、相手にしないでおこう。僕はなんと言われようが構わんしね。
「あなたね~他の冒険者さんに迷惑かけないようにって、何回言えばわかるんです?」
「へへ、タリア〜つれないこと言うなよ。早く俺さまパーティの専属受付になれよ〜」
モヒカンはタリアさんの大きな膨らみをジロジロ見ながらよだれを垂らしている。なにやってるんだこの男…
「おい、測定結果が気に入らないなら、もう一度やる。だからタリアさんに迷惑をかけるな」
「ああ? なんだぁ? 俺様に文句でもあるのか? お、そっちの女もとびっきりの上玉じゃねぇか。そんなインチキ野郎なんかのパーティ抜けて俺様のところへ来いよ。毎日たっぷり可愛がってやるゲヒヒ」
モヒカンは舌なめずりをしながら、ルルリアをジロジロ見る。
「なによ、あんたのパーティなんか入らないわよ。汚い顔を近づけないで、マーク先輩がインチキなんかするわけないでしょ、実力よ!」
モヒカンがルルリアに手を伸ばす。が、その手は彼女には届かない。僕がモヒカンの腕をつかんだからだ。
「おい、いいかげんにしろ。気に入らないなら表に出ろ。彼女たちに迷惑をかけるな」
「ほほう、威勢のいいインチキ野郎だなぁ。だが表に出なくても勝負はつけられるぜぇ」
モヒカンがギルド中央にある机に腕を置いて。クイクイと僕を手招きする。
え? なに?
モヒカンのいう勝負とは、腕相撲だった。
なんだそれ。
まあいい、腕相撲ならギルド内でもそこまで迷惑かけないだろう。
「へへ、俺様に認められたければ腕相撲に勝ってみな。まあ無理だがな」
僕は黙ってモヒカンの腕をとる。
スタートの合図もなくモヒカンが腕に力を入れて押してきた。あれ? がっしりとつかんだ手からは、さほどパワーを感じられない。これなら【ソーラーパネル】を使わなくてもなんとかなりそうだ。
僕がモヒカンの腕を一気に押し倒そうとした時、モヒカンの手に光がともる。
そしてモヒカンのこぶしは熱を帯び始めた。
「ヒャッハー! 俺様は腕相撲で負けたことがないんだよ! どうだ熱いだろう? 光の勇者グリタス宅配店の大特価10,000ゴールドで購入した「グリタスグローブ」だ! 光のこぶしだせぇ! 俺様の熱~いこぶしで、腕が丸焦げになる前にギブアップしな。そして女を置いてくんだなぁ~俺様のモノにしてやるぅゲヒヒ」
なるほど、やけに自信たっぷりなのはこれがあるからか。
にしてもグリタスグローブ? 魔力を込めると初級光魔法が発動してこぶしに付与されるようだ。
でも、なんか雑な作りなので付与効果が薄い。こんなのに10,000ゴールド取るとかぼったくりなんじゃ…。王様に勇者たるもの不当な金銭の授受はしないようにとか言われてなかった? ていうか、「光の勇者グリタス宅配店」ってなんだ。
「ヒャッハー! これでそこのおっぱい聖女とおっぱいギルド嬢はおれものだぜぇ!」
モヒカンがゲヒゲヒ笑っている。売る方も売る方だが、買う方も買う方ってことか。
いずれにせよ、ルルリアやタリアさんのことをモノ扱いするのは許せない。
「レクシス、右手に
「ああ? なにブツブツ言ってんだ。ひひひ、おまえの手も限界だろう? 真っ赤に染まってきてるぜぇ」
ぼくの右手は徐々に放電出力があがっていく。
「あれ? 熱くなっているのは俺さまの手…」
その通りだ。僕の右手は
「い、痛っ! なんだこれ! 痛ってぇぇえええ! てめぇ手を離しやがれ!」
「ギャア! ビリビリすりゅうううう!」
僕はそのままモヒカンの腕を押し倒した。
モヒカンは右手が黒焦げになって全身ビクンビクンしている。
「これで勝負ありだね。ルルリア、彼に
聖女ルルリアはモヒカンの前にズィと出て、睨みつけた。
「マーク先輩はインチキなんかしてません! わかりましたか!」
「痛いよう、はやくヒールをかけてくれよぅ」
「わ・か・り・ま・し・た・か?」
「ひぃ~、わ、わかりました。お、おれが悪かったよぅ」
聖女さま、顔怖いです。
でも、僕を気遣ってくれたのか。やはりルルリアは僕のことをわかってくれてるんだ。
「レッドヒール」
ルルリアがモヒカンの腕をつかんで、ヒールを詠唱する。
みるみるうちにモヒカンの右手が再生されていく。様子を見ていたギルドの取巻きたちも感嘆の声をあげる。
ヒールといってもピンキリだ。ルルリアのヒールはかなりレベルが高い。この速度で完全再生などなかなかできない。
合わせて彼女は火属性に関する回復がもっとも得意であり、赤のヒールと呼ばれている。今回の火傷などはまさに得意中の得意分野である。
「まあ、これで懲りたでしょモヒカンさん。あなたはペナルティとして10日の冒険者活動停止ですからねぇ~」
受付嬢のタリアさんからビシッと言われたモヒカンは、ひぃいいと叫びながらギルドから逃げるように去っていった。ていうかモヒカンて名前なんだ…
「マーク先輩〜!」
ルルリアが抱きついてきた。
そのあとはギルド内から拍手が巻き起こった。
どうやらモヒカンは色んな人に迷惑をかけていたようだ。
「ほら、マーク先輩は凄いんですよ。じゃなきゃ拍手なんかされませんよ」
「そ、そうか…」
僕の腕の中でルルリアが満足げにドヤ顔をしている。
「ふう、追放されたけど、ルルリアのおかげでパーティーを組むことができたよ。ありがとな」
あ、無意識にルルリアの頭を撫でてしまった。
「ひゃっ」
「あ、ごめん…」
「だから…謝らなくていいですって…」
そんなやり取りをしていると、受付のタリアさんがニヤニヤしながら話しかけてきた。
「ふふ~わたしサンマークパーティーの専属受付になります~クエストの依頼は私を通してくださいねぇ~。ふふ、こんな有望株を逃すわけにはいきませんからね…」
タリアさん満面の笑顔だ。後半なにを言ったのか聞こえなかったけど。なぜなら拍手がいつの間にか変なコールに変わっているからだ。
「マークありがとよ! スカッとした!」
「マーク先輩! すげぇ」
「だめ~マーク先輩って言っていいの私だけぇええ」
ルルリアのよくわからん叫びも含めて、マークコールはしばらく続くのだった。
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