7-6

 定期連絡に際し、儀式について相談してみよう。

 そう考えた俺は、学校が休みの土日に、クシナとの交信を図っていた。通信を受け取ってくれるのは、きっと師匠だろうと思っていたのだが、画面に現れた人物は、我らがウスク隊長だった。


「ウスクさん! ご無事で何よりです」


 師匠から話には聞いてはいたが、自分の目で、しかと元気な姿を見るまでは、やはり安心できなかった。俺は、肩の荷がおりた気分になり、思わず口から息を吐いていた。


 俺が何を言わんとしているのかは、すぐに、ウスク隊長にも伝わったのだろう。不甲斐ないと言いたげに、口元に苦笑を滲ませる。


「あのときはすまなかったね。私がもっと早くに気がつけば、君に無理をさせることもなかった」

「いえ、とんでもありません」


 少しばかりの雑談をしてから、俺は、すぐに本題に入った。


「それで、相談なのですが……」


 俺たちの現状を、簡単に説明していく。内容が儀式に関わるものなので、相談相手としては、できれば上閲じょうえつがベストだったのだが、ウスク隊長も、師匠に劣らず大変優秀だ。年長者としてのアドバイスを、ぜひとももらいたい。


 束の間、考えるそぶりを見せたあと、ウスク隊長は、おもむろに口を開く。


「聖域の場所を、たがえてるという可能性は?」


 もっともな指摘だが、それはない。


「場所については、現地の人間に案内させました。間違ってるとは思えません」

「うん、そっか……。さすがに分野が聖域関連となると、ちょっと私の手には余るかな。次回の連絡までに、上閲じょうえつに話を通しておこう」


「お手数、おかけします」


 そう返事はしたが、頭ではウスク隊長の言葉遣いに、引っかかりを覚えた。お役目のために、師匠が聖域に向かっている、その最中なのだとしても、さとには、上閲じょうえつが二人いたはずだからだ。


 ゆえに、俺は、確認を取るように、再び口を開いていた。


「二人とも、今は出払ってる感じですか?」


 ウスクさんが、じっと俺の目を覗きこむ。まるで、そのことについては、あまり尋ねてほしくなかったかのような、俺を煙たがる振る舞いだった。


「ちょっとね……。定時連絡も、次からは日中じゃなくて、夕方以降だと、こちらも都合が合いやすいと思う。悪いけど、よろしくね」


 わかりました。

 そう俺が返事する間もなく、通信は、再び一方的に切られていた。向こうにも何か、大きな事情があるのだろうが、俺は、自分の知らないところで、どんどんとクシナが変わっていくようで、内心ひどく動揺していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る