6-3
宇宙船のドアを開け、俺とマイは、静かに地球に降り立つ。理想を言えば、武術に覚えのある、船を守るための人員が、ほしかったところだが、さすがにマイを一人で、斥候に向かわせるわけにはいかない。戦闘経験のある俺が、一緒に行くのがベストなはずだ。
夜間のうちに復活した、大量の魔鉱石を抱えながら、俺たちは、外の調査をはじめた。
これは、大陸を目視したときにも、気がついたことなのだが、改めて、この星の緑の豊かさには、感心してしまう。クシナとは、えらい違いだ。クシナの地上を覆っているものは、岩と土くれ、それに膨大な量の砂だけだ。所々には、とってつけたように、自生する
視界いっぱいに広がる、本物の緑に対し、束の間、俺たちは、言葉を失っていた。
状況を思い出し、正気を取り戻した俺たちは、付近に、バケムクロが潜んでいないかどうか、慎重にチェックをしていった。だが、いくら見回ってみても、まるでその気配がない。鳥のさえずりや、虫の音が聞こえて来るばかりで、その痕跡の一つにさえ、遭遇することがなかった。クシナに生き物はほとんどいないので、これは、想像の域を出ない推測になるが、周囲にバケムクロがいた場合には、鳥たちも、我先にと逃げるのではなかろうか。バケムクロが襲うのは、人類だけという可能性も、完全に拭い切れはしないが、それでも俺には、今のところは安全のように思えた。
そうして、俺たちが山中を歩いていれば、驚いたようにマイが口を開く。
「生き物が、すごく多い」
何を言い出すかと思えば……。
反応の遅さに、思わず、苦笑いを浮かべてしまうが、俺も同じ感想は抱いた。ようやく気持ちをわかりあえたことに、俺は、マイに対して、妙な好意を抱いてしまった。
「ああ、そうだな。それに、空気もかなり澄んでるみたいだ。この様子だと、地上対策の魔法は不要だろう」
クシナの大気は恐ろしく濁っており、生命には有害だ。地上で活動する場合には、俺たちは、必ず身を守るための、魔法を使っている。拠点や聖域内の空気も、地上に由来するものなので、定期的な洗滌は欠かせない。聞くところによれば、
これが、使いきれないほどに多量の水を持つ、この星の特徴なのだろう。地上は、まるで俺たちの祖先が語ったような、生物にとって、住みやすい環境だったのだ。
ある程度の探索をし、バケムクロの不在を確信した俺たちは、そのまま、町のほうにまで足を延ばしていた。薄々、予感はしていたが、案の定、そこにも数多くの人間が暮らしている。
それらの集落を、二人で注意深く観察していると、マイがあることに気がついた。
「建物が多いね」
「ああ」
「定住してるのかも」
くり返し、似たような感想をつぶやくマイに対し、俺は、少し不信感を抱いたが、やがて、その言葉の意味を理解する。
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