6 下越市
その星に降りるにあたって、何よりも俺たちを驚かせたのは、あまりに明るい恒星の存在だった。
太陽。
ワルハバとは、比べ物にならない光の量に、これまで冷静さを保っていたマイでさえ、驚きを隠せないでいた。
「これなら、バケムクロを見過ごさないね。安心しなよ」
マイは、地球に降り立ったあとの、話をしているのだろう。そのお役目が、
これだけの光と暖かさに接しても、マイの思うことは、本当に、ただバケムクロを殺すことに、集約されているのだ。
感動を分かちあえない。
地上に出ることのない、オオミやシイナは当然としても、俺でさえ、神にも似た畏怖を、太陽の日差しに感じるというのに、マイには、それが一切起こらないのだ。
分けてほしいくらいの光量。
それを目の前にしてなお、己の職務に忠実であるマイに対し、俺は、一抹の寂しさを覚えるとともに、この青い星に、確かな嫉妬心を抱いた。
「羨ましいな……」
小声でつぶやいた独り言は、だれにも聞かれなかったようだった。明瞭でない声量に、シイナが尋ね返して来るが、俺は、首を横に振って応じると、みんなに向かって言った。
「これだけ明るければ、地上に
俺の提案にみんながうなずく。
「場所はどうする? 結構、大陸が多いみたいだが……」
「そうだな」
言いながら、俺は、再び地球を見つめた。
「できるだけ、でかい大陸のほうが都合がいい。ただ、俺たちが闖入者である以上、直接、大陸に着陸するのは、避けたいところだな」
反対意見は挙がらない。俺たちは、見合った場所を、みんなで探していく。
「ねえ、見て。あの巨大な大陸……。その少し右のほうに、小さな島が見えない?」
シイナの声に、俺たちは、目線を向ける。そこには確かに、「く」の字に折れ曲がった、
「ああ……いいね。あそこにしよう。日陰になるのを待ってから、俺たちは、あの島に降り立つ。それまでは、各自、休息を取ってくれ。たぶん、これが最後の、息継ぎになると思う。存分に、英気を養ってほしい」
※
俺とシイナは、時間が来るまで、目を閉じて横になっていたが、着陸するときから、覚悟を決めておく必要のあるマイは、どうしても違うようだった。
「警戒すべきは、やっぱりハダカ?」
「そうだね。人型のハダカ系は、どんなやつでも強力だと思う。クシナにだって、まだまだ知らない種類が、大勢いるだろうから。逆に、
「じゃあ、ウロコはどういう扱い?」
「それなら――」
交わされる専門的な話をよそに、俺とシイナは、束の間の眠りについた。
マリア……。
待っていてくれ。すぐに、調査をおわらせてみせる。
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