5-3
「ん? なぜ、もう咲いてる?」
マイが訝しげにつぶやき、俺ににじり寄って来る。
無理もない。
この花は、
花の開花度合いから、星の魔力量を判断する。その考えの破綻を責めるように、にわかに表情を硬くしていくマイを、どうにか押しとどめながら、俺は、慌てて言葉をつないだ。
「たぶん、距離の問題だろう。船の動力源にしてる魔鉱石が、近くに大量にあるせいだ。心配ない。これも想定のうちだ。……そこで、これも併せて使ってく」
再び、俺は、リュックサックからものを取り出す。今度は二つだ。くすんでしまった半透明のケースと、それと似た色をした粉。
粉のほうは、
「この箱に、
感心したように、シイナは、ゆっくりとうなずくだけで、何も言わない。オオミも、すぐには反応を示さなかった。
「なるほど。だから、ヨキだけ、こんなに大荷物だったんだな」
「まあ、そういうことになる」
本当は、ウスク隊長の荷物を、事前に預けられていただけなのだが、あえて言う必要はないだろう。
俺に詰め寄っていたマイも、どうやら納得したようで、ほどなくして離れていった。
「隊長。あんた、すごいね。正直、あたい、馬鹿にしてたよ」
「あはは……」
だいぶんストレートーな発言に、俺は、苦笑いしか返せない。だが、マイの指摘は正しいものだった。真実を話すべく、俺は、もう一度、口を開く。
「けど、実際は、師匠とウスク隊長の手柄だよ。俺は、
マイは、何も答えない。
そこが、自分の定位置だとでも言うように、宇宙船の入り口に、てきぱきと戻っていくだけだった。
弱冠十三歳にして、
きっと、すでに大人のマイにしてみれば、俺のような半人前は、さぞかし子供っぽく見えているのだろう。
「そしたら、あとは操縦だけだな」
オオミの合図に、シイナが笑う。
「やってはいるよ。この宇宙船……色々な天体の場所と、現在地もわかるみたいだしね。でも、いまひとつ要領をつかめないんだよ。繊細な魔力コントロールを、たまに求められるだけで、あとは何も……。ひょっとして、あたしよりも、マイのほうが適任だったんじゃない?」
言って、シイナは、マイに目配せを送るが、彼女は小さく首を横に振った。
「あたいに、そんなことできない。あたいにできるのは、バケムクロを殺すことだけだ」
ずいぶんと物騒な。
そう思いはしたが、俺も、いざとなれば役立たずだろう。未知の星で、奇怪なバケムクロと相対したとき、どれだけのことが、補佐官の俺にできるのだろうか。本職の
「ようやく、スタートを切れたって感じだな」
俺の何気ない一言に、みんなが慰めるように笑った。
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