4 バケムクロ
翌朝、俺たち
普段よりも、だいぶ遠回りのルートを通ったのは、地下空間内の移動を多めにし、少しでも、地上でバケムクロと遭遇する危険を、回避するためだった。
もちろん、地下であっても、出るときは出る。しかし、地下であれば、定期的に
俺たちの努力は、実を結んだようだった。
一度もバケムクロに遭遇することなく、無事に聖域に到着したのだ。あとは、
「ハルカ。俺が抜けることで、補佐官としての務めが増えて、大変になると思う。だけれど、なるべくは、マリアのことも、気にかけてやってほしい」
「わかったよ、ヨキ兄ちゃん。俺、頑張ってみる」
「よろしく頼む」
さすがに、すでにユイさんという、相手が決まっているモタカ先輩には、俺としても頼めなかった。いくら、
そこからたいして間を置かず、図ったように、ウスク隊長たちは姿を見せた。
先頭に、若い女性。
装いを見る限り、
そんなことを思いながら、俺は、何気なく彼女の足元を見た。
――かすかに、何かが動く。
正体なんか、ほかにはない。
バケムクロだ。
聖域に侵入されるなんて、いったいいつ以来だろう。
「隊長、そこに――」
俺の声は、
「構えろ!」
人間の頭ほどのサイズ。
相手はまだ、小さなバケムクロだ。
何を大げさなと思った俺の眼前で、そいつは、周りからがらくたを集めるようにして、どんどんと膨らんでいく。
直後、それは、尋常ならざる手足を持つ異形へと、変貌を遂げていた。
人型でありながら、人とは似ても似つかない。
完全なる異物――バケムクロ。
「危ない!」
バケムクロが両腕を振り回す直前、ウスク隊長が
だが、避けきれてはいない。
体に怪物の腕があたり、ウスク隊長たちは、大きく後ろに吹き飛ばされてしまう。
それだけではない!
ウスクさんたちをはねのけてなお、腕の勢いは止まらず、辺りにあった岩をあちこちへと弾き、その一部にいたっては、俺たちのほうにまで飛んで来ていた。
大慌てでの回避。
その場で身をかがめた俺は、不安げに、ウスク隊長のほうを見やる。
「……うっ」
漏れる、うめき声。
よかった。隊長たちは生きている。
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