第10話

「スチール、ボブスレーに変形」

「ラージャ」

 雪をかき集め、斜面に長い雪上コースを作った。アルカとエリスは二人乗りソリに変形したスチールに乗りこむと、斜面の頂上から滑り出した。


「いくぞー!」

 ジェットコースターのように加速しながらソリが滑走する。急カーブではソリは九十度傾きながら、曲線コースを滑り抜ける。

「キャー」前に座ったエリスがアルカの胸に持たれかかる。

 ゴールにたどり着くと、スチールは後部からブレーキフックを出して急停止した。


「やった、成功だ。ボブスレートラックコースの完成! エリス……面白かった?」

「うん、楽しかったよ」


 ゴールにはミーシアが工具を持って立っていた。

「スチールの調子はどう? 新たな変形機構を加えてみたけど」

「絶好調! スチールも復帰してよかった」

 ミーシアが時空カプセルを改造して、スチールを復活させたのだ。


「これで地球の汚染濃度が下がっていく。何年かかるかわからないけど、汚染濃度がゼロになるとスーパースノーは自然分解するようになっている。そうなればこの星に青い空が広がり、人々が再び訪れる日が来るかもしれないわね」

「雪解けの日が訪れたら、鉄くずの私は用済みですね……」

 エリスが力のない笑みをこぼすと、アルカは手で雪玉を固め、エリスにぶつけた。


「何言っているんだ! 君はこの星を救ったヒロインじゃないか。僕は君とずっと一緒にいたい。母さんも……そうだよね?」

「そうよ、あなたが機械かどうかなんて関係ない。私達のつながりがこの奇跡をはぐくんだ。それは何ものにも代えがたい大切な絆。いつまでも一緒にいてね」

「ミーシアさん、アルカ、ありがとう」


「それにさ、僕はエリスに……恋しちゃったからね」

「ふふ、そうだったね。君からその言葉を聞いたのは……何回目だったかな?」

 二人は視線を合わせると、恥ずかしそうに顔を背けた。


「よーし、みんなで雪合戦でもやろうか」

 ミーシアの掛け声に、アルカとエリスは雪を握りしめると、逃げ回るスチールに雪玉を投げつけはじめた。


 この星に降り積もるものは純白の淡雪あわゆき

 そして両手に抱えた想いをぶつけ合い、

 宙を舞う希望の結晶

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三六五回目の初雪 NEURAL OVERLAP @NEURAL_OVERLAP

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