第8話

 宇宙レーダーに赤い軌跡が灯った。アルカは画面を確認すると、急いでマイクに口を近づけた。

「母さん、次元崩壊爆弾がレーダーに映った」

 ――まだ完成していない、このままだと間に合わない。アルカ、エリスを時空カプセルに乗せてあげて。


「わかった、彼女だけは助ける。そしてまた次の過去でなんとかしてもらおう」

 アルカはエリスのほうを振り向くと、諦めた面持ちで彼女を見つめた。

「エリス……ごめん。やっぱりこうなる運命みたいだ。もう一度、過去に戻ってくれるかな。そしてこの地球を守ってほしい」


 エリスは床に散乱した歯車を見つめていたが、顔を上げるとサビ色の涙を流した。

「この涙と悲しみを三百六十四回も積み重ねてきた。君の寂しい顔を見るのはもう嫌なの。今度は私が未来を変える」


「……エリス?」

「ジェットコースター、ドライブ、ちょっとした冒険、そして……私にエリスという名前をつけてくれた。いつの間にか自分が機械であることまで忘れてしまったよ。ありがとう、嬉しかった」

 エリスは屋外に向かうと空を見上げ、背中のハッチを開くとジェット噴射ノズルを展開した。

「成層圏まで飛ぶことができる。私が爆弾に体当たりして爆破させてくる。その間にスーパースノーマシンを完成させて」


 飛び出そうとするエリスの腕を、アルカが両手で強く掴んだ。

「待って! まだ手はある。スチール……来てくれ」

「ラージャ」スチールがアルカのもとまでノロノロと移動する。

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