第7話

 コースターが終点にたどり着くと、アルカは満足げに声を荒げた。

「どう? すごいでしょ、これ僕が作ったんだ」

「うん、面白かった」

 アルカがコースターから降りると、エリスは座ったまま手を差し出した。アルカが首をかしげる。

「こういう時は女の子に手を貸すものよ」

「え? 手を貸す?」

 アルカはおそるおそる手を伸ばすと、エリスの手をそっと握った。エリスがすくりと立ち上がると、コースターから足を降ろした。

 アルカはエリスが降りる瞬間になびく長い髪に見惚れていた。

「エリス。初めて聞いたときから、いい名だと思ったんだ」

「それはね、君が……」

 

 その瞬間、握った右手の腕が赤く点滅する。エリスがすぐに袖をめくると、ゲージが赤く染まっていた。

「やばい、レベルテンに達している! 母さんに連絡しないと」

 二人は急いでガレージに戻ると、通信機のマイクに声を張り上げた。

「母さん、レベルテンになっている。どうすればいい?」

 ――宇宙レーダーの反応はある? 次元崩壊爆弾が向かっている形跡は?

「それはまだない」

 ――わかった、作業急ぐ。エリスからデータをもらっているから、早く完成すると思う。

 

 アルカはへたりと床に座りこむと、エリスのほうに顔を向けた。

「母さんに何かデータを渡したんだ」

「ええ、ミーシアさんが未来で進めていた研究データを渡しておいた。今度こそ間に合ってほしいから」

「……未来の僕達はどうなったんだろうね」

「わからない、でも今ここに君がいる。私はそれだけで充分」

「僕にはこの星がそこまで大切なものなのか、まだよくわかっていない」

「未来の君も同じことを言っていたわ。でもいざ爆弾が迫ってきたら、第一にこの星と私のことを考えていたよ」

「それはたぶん何かを守りたい、そんな気持ちがどこかに……あるんだろうな」

「不思議ね、人間ではないのにそういう『感情』が私にもある。私は君を守りたい」

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