第2話

 アルカ、ミーシアの二人は防護服を身にまとい、ガスマスクを被ると、輸送艇から落とされた鉄塊の山を登りはじめた。ガチャリ、ガチャリと鈍い音が足元で響く。

 ミーシアは義手のロボットアームで価値のありそうな機械部品を、掴んでは放り投げていた。

「どう、アルカ。めぼしい部品は見つかった?」

「亜空間航行用のハイパープラグがいくつかあるけど、汚染濃度が限界値を超えてる。洗浄でどうにかなるレベルじゃないなあ」

「多少の汚染だったら、スノーコーティング汚染除去加工するからいいわよ」


 アルカは鉄塊の山のいただきに到着したところで、思わず声をあげた。

「なんだこれ? すごいもの発見した!」

 ミーシアがアルカのもとまで足を運ぶと、そこにガラス窓のついた銀色の円筒カプセルがあった。

「何かしら? 機械部品ではないようね」

 アルカがガラス窓のほこりをグローブで拭き取ると、そこに少女の眠る顔が見えた。


「げっ母さん、人が入ってる!」

「……冬眠用コールドカプセル? 持ち帰って調べてみようか」

 二人はそのカプセルを山から引きずり下ろすと、再び価値のありそうな機械部品を拾い集め、ガベージコレクターに積み込むと、車のアクセルを踏んだ。 

 置き去りにされた巨大戦艦を横目に、夕陽が赤く照らす大地をひたすら走り続ける。


 ガレージに戻ると、車から降りたアルカはスチールに呼びかけた。

「スチール、ロボットに変形」

「ラージャ」

 スチールはタイヤをしまい、腕と足を引き出してロボットのような形態に変化した。

「そのカプセルをガレージに運んでくれ」

「ラージャ」

 スチールはカプセルを持ち上げると、ガレージの入口へ向かった。


「スチールって、すごい便利だよね。あれを母さんが造ったの?」

「へへん、私は天才だからね。この廃品の山からなんでも造り出すことができるわ」

「でも……自分の体は治すことができないの?」

 ミーシアは義手の左腕を見つめながら、ふっと笑った。

「機械は直せるけど、生身の体は専門外だからね。汚染には勝てなかった……父さんも」


 さっそくミーシアはカプセルに近づき、計測器を装着して分析を始めると、義手に埋め込まれた画面に複雑な文字列がずらずらと表示された。

「パスコード入力で簡単に開きそうね……ええっと、エス、ティー、イー、イー、エル」

 ミーシアがカプセルに設置されたキーボードでパスコードを入力すると、プシュウという音とともにカプセルの蓋が自動的に開いた。

 もうもうと白い煙が立つ中を二人が覗きこむと、そこに白いワンピースを着た金髪少女の眠る姿があった。

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