三六五回目の初雪

NEURAL OVERLAP

第1話

 ウォンウォンという重苦しい低音が茶褐色の空にこだました。

「母さん、産廃艇が来たぞ」

「ああ、廃品回収に向かおうか」

 輸送宇宙船が系外惑星から産業廃棄物を運んできたのだ。


 アルカは緑色のドラム缶状の物体をポンと叩くと声をかけた。

「スチール、ガベージコレクター廃品収集車に変形」

「ラージャ」

 ドラム缶はガコンガコンと音を立てながら四輪タイヤを出し、蓋をパカリと開けるとハンドルとシートが飛び出してきた。

 アルカはシートに飛び乗ると、ハンドルを握りアクセルを踏んだ。


 鉄くずの小山が左右にそびえるデコボコ道を走りながら、空を飛ぶ輸送艇の後を追い、母親のミーシアもオフロード三輪車でその後に続いた。

 輸送艇が落とす黒い影までたどり着くと、アルカは上を見上げた。

 ちょうどその時、輸送艇は急に船体腹部の大型ハッチを開き、ガラガラガラという轟音とともに、無数の機械部品を荒涼とした大地にまき散らした。


「あぶない!」

 空から落下した機械部品が砂煙すなぼこりを立てる中、アルカはハンドルを左右に回しながら、障害物を避けて走る。

 大型ネジが地面で跳ね返り、車体にぶつかると鈍い音を立ててフロントバンパーをへこませた。

 輸送機は最後に巨大な円筒を落とすと、ハッチをすぐに閉じ、急上昇して赤い雲の隙間に消えていった。


「大丈夫ー? アルカ」

「うわ、バンパーやっちまった。いつもならいったん空中停止して、ゆっくり落としていくんだけどなあ」

「よほどヤバいものでも積んでいたんじゃない。どんなお宝が埋もれていることやら」

 二人は車を停止させると、降り積もったゴミの山を眺めた……


 宇宙開発が進み、スターダストと呼ばれる有害物質が星々に散乱していた。

 ここはどんな有害物質でも自由に投棄できる夢の星、『ドリームスター』。

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