12月22日 洞窟遊牧民のコケモモ酒

 ここの食事は南の大陸と違って、舌が麻痺するほど激辛ではありません、ある程度辛いものも大丈夫でしたら、伝統料理をご馳走になっていきましょう。


 大きな地底湖がたくさんある環境に住んでいる洞窟の民にとっては、魚よりも鳥や鹿の肉の方がご馳走なので、客人には肉を出してくれることの方が多いのですが、ここはあえて普段食べている家庭料理をリクエストします。生のお魚は大丈夫ですか? ヴェルトルートはお刺身が美味しいんですよ。


 霧がかかってぼんやりと薄暗い地底でもなお透き通った色に輝く地底の湖や川は、とても水が澄んでいて綺麗なことは一目瞭然ですが、その期待を裏切らず、ここで獲れる魚は淡水魚でありながら火を通さずに食べられるほど臭みが少なく、身も締まっていておいしいんです。


 ルェン族の伝統の食べ方は、その半透明の美しい白身魚を向こうが透けるほど薄く削ぎ、赤っぽい色をした甘辛いタレをかけて食べます。かなり辛くて香辛料の香りが強いですが、豆を発酵させて作った調味料なので、味噌の仲間ですね。


 そんなお刺身と、キノコたっぷりの魚介スープを使った麦粥、それから平原のコケモモで作った果実酒が今日のごはんです。この国では十五歳から飲酒できますが、ルェン族の風習では十五歳から二十歳の間まではヤギの乳で割ったコケモモ酒しか飲んではならぬとされています。火の国での様子を見る限りお酒は大丈夫そうですので、どちらも味見してみましょうか。


 お酒は透き通った美しいピンク色。甘くて良い香りですが、こう、野生の果実だな、という感じの味がしますね。ヤギの乳は慣れるまで癖が強く感じるかもしれません。このお酒も一瓶分けてもらってお土産にしましょう。色も綺麗ですし、不思議な色合いのリボンが結ばれた持ち手付きの瓶も可愛くて、喜ばれますよ。


 リボンといえば、ついでに髪をルェンの伝統の髪型に編んでもらいましょうか。男女問わず、耳の前に垂れるように三つ編みを作るのが特徴ですが、髪が短ければ後ろの部分を細かく編み込んでもらえます。髪飾りも種類が色々。元々は駆竜についばまれないように編むものであったそうなのですが、向こうの竜達は揺れる三つ編みも普通につつき回していたので、真偽の程は定かではありません。


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