12月23日 神殿のハーブティー
スティラ=アネス根源中央大神殿は、ヴェルトルート大洞窟のほぼ最奥部に近い森の中にあります。紫色がかった暗い霧の森の中に真っ白な石筍型尖塔の立ち並ぶ様は、神秘的でありながら少し恐ろしくも感じるかもしれません。一番高い塔が光の神殿です。とりあえず中へ入ってみましょうか。
ああ、やはり美しいですね。光の神殿内部は一見して柱が並んでいるばかりで窓は見当たらないのですが、間接照明ならぬ間接採光窓があちこちに隠されていて、まるで天井を通り抜けて天からの光が降り注いでいるような、実に不思議な雰囲気になっています。
一番奥の祈りの間は、唯一見える場所に大きな天窓がある部屋です。祭壇まで続く階段の両脇には六柱の神々の像。燃える髪を持つ火の女神フランヴェール、下半身が水竜の尾になっている水の神オーヴァス、背に三対の翼がある風の神エルフト、蝶の羽が生えている大地の女神テール。それから人間には加護を与えない神ですが、鹿の角の生えた愛の女神リーエルフローラと、天秤を持った善悪の神レヴィエル。
六柱の神々は皆兄弟で、父たる光の神と母たる闇の神の間に生まれた、というのが
と、そんな風に神像が並んでいますが、肝心の祭壇の上は空っぽです。光と闇の神の像はありません。けれど祭壇の真上にある水晶の天窓から柱のように光が差し込み、その光によって室内の闇がより強調されています。見るだけでも構いませんが、少し祈ってみますか? では右手を握って、拳を胸に当て、その拳を左手で包み込んでください。これが祈りのポーズです。
神殿の中を一通り見学したら、お茶をもらって帰りましょう。神殿の庭園で栽培されているラベンダーと薔薇の花のブレンドティーがね、美味しいんです。その辺を歩いている神官さんに声をかけて「くださいな」と言えば、綺麗な蝋引きの紙袋に分けてくれます。代金は、受け取ってもらえません。それから献金できる場所もありません。大半の神官は硬貨なんて見たこともないようです。ここの人達、どうやって生活しているんでしょうね……?
無理にお金を握らせても困らせてしまいますので、どうしても何かお礼をしたければ可愛い瓶に入れたお砂糖とか、家庭菜園の野菜とかをプレゼントしましょう。喜んでもらえますよ。
今日はこのハーブティーでリラックスして、明日の祝祭に備えましょう。明日といっても日付の変わった直後の真夜中に始まりますから、早めに仮眠をとっておきましょうね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。